図書出版

花乱社

『葉山嘉樹・真実を語る文学』楜沢健他著/三人の会編

■花乱社選書3
■本体1600円+税/A5判/184/ 並製
■ISBN978-4-905327-18-9 C0095
■楜沢健他著/三人の会編(堺利彦・葉山嘉樹・鶴田知也の三人の偉業を顕彰する会)

■各紙に紹介されました。
「図書新聞」8.4 「葉山嘉樹」という問題/「室蘭民報」7.2/「出版ニュース」7月上旬号/「週刊読書人」6.29/「東京新聞」6.21夕刊 3000字の真実/週刊「新社会」6.5/ 「読売新聞」京築版5.19 葉山嘉樹の功績紹介/「毎日新聞」京築版 5.16「真実語る文学」見直して

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「馬鹿にはされるが真実を語るものがもっと多くなるといい」と時代に抗した福岡県みやこ町出身の作家葉山嘉樹(1894〜1945)。
『セメント樽の中の手紙』『海に生くる人々』などで知られ、小林多喜二と並ぶプロレタリア作家。
現代にも通じる社会的格差や貧困を見据えつつ、葉山は世界文学へとつながる独特で不思議な作品を紡ぎ出した。その魅力と現代性に焦点を当てた楜沢健講演「だから、葉山嘉樹」他、同時代の証言を含め、作家、評論家、研究者、ジャーナリストらが多様な視角から論じた作家論・作品論を集成。
三人の会(堺利彦・葉山嘉樹・鶴田知也の三人の偉業を顕彰する会)が所蔵する関係資料を初公開。

【目次】
   葉山嘉樹とわたし/佐木隆三
 T 葉山嘉樹と現代
   1 だから、葉山嘉樹/楜沢 健
   2 葉山嘉樹と故郷豊津/川本英紀
   3 葉山嘉樹の一面/葉山民樹
   ■講演会「プロレタリア作家葉山嘉樹と現代」印象記/和田 崇
 U 葉山嘉樹・人と文学
   1 葉山嘉樹の文学/前田角藏
   2 働くこと闘うこと、そして命 葉山嘉樹の労働と文学/峯村康広
   3 葉山嘉樹の魅力 U/浅田 隆
   4 葉山嘉樹 プロレタリア文学だけでは、くくれない/丹野達弥
   5 「死」をめぐる邂逅 葉山嘉樹と萩原朔太郎/野本 聡
   6 堺利彦農民労働学校のアドバイザー葉山嘉樹/小正路淑泰
   7 「満洲開拓」と葉山嘉樹 アイデンティティー喪失と回復への旅立ち/鈴木章吾
 V 葉山嘉樹・回想とエッセイ
   1 葉山嘉樹さん/鶴田知也
   2 八景山 葉山嘉樹 故郷思い異国の土に/広野八郎
    [付論]広野八郎のこと/大蕪N人
   3 葉山嘉樹 気骨のあるサムライ/小牧近江
   4 恨みの一節/宮原敏勝
   5 葉山嘉樹終焉の地・徳恵を訪ねて/垣上 齊
   6 葉山嘉樹の転向問題について/塚本 領
   7 三つの文学碑物語/古賀勇一
   8 葉山嘉樹と里村欣三/大家眞悟
   9 『葉山嘉樹への旅』と韓国/原 健一
   10 葉山嘉樹と室蘭 文学碑建立とエピソード/西原羊一
   11 葉山嘉樹・鶴田知也と現代/玉木研二

【本文より】 
 第六回目はどうでしょうか。「働いても働いても、なんでちゃんは惨めなのか?」。こういうことを問いかけているんですよ。(略)虎さんからすれば、最も触れてほしくない、答えたくないことなんですよ、これは。(略)花ちゃんの質問は、はじめは答えられないような質問です。だんだん、それが答えたくない質問へ、さらに答えがない質問へと高度化していく。答えられない、答えたくない、答えがない。連載の一回一回ごとに、問題がどんどん膨らんで、大きくなっているんです。(略)
 格差や労働の矛盾、社会の不合理や不平等といった問題は、たとえ大人が口を噤んで、目をそらそうとも、子どもはちゃんと目をそらさず口にするんです。そういう場面を書きながら、きっと葉山嘉樹は大事な問題から目をそらさず、口を噤まないように踏ん張っていたんだと思います。これが『移動する村落』の素晴らしさであり、葉山嘉樹の素晴らしさなんです。子どもの目線から、分かったつもりになっていることを、もう一度疑い、掘り下げる。必ずしも答えがすぐに出せるわけではないということに耐えつつ、しかしけっしてそこから逃げない、目をそらさない、口を噤まない。このような素晴らしい場面を書いた作家なんて、おそらく葉山嘉樹の他にいませんよ。
---------楜沢 健「だから、葉山嘉樹」より

 

 葉山嘉樹〈1894-1945〉

福岡県京都郡豊津村(現・みやこ町)出身。豊津藩上級武士の家系に生まれる。旧制豊津中学校(現・福岡県立育徳館高等学校)卒業後,早稲田大学高等予科中退。その後,船員として外国航路や室蘭─横浜航路の貨物船に乗船。1919年,名古屋のセメント工場勤務中に労働運動に参加,多くの労働争議に関わる。1923年,名古屋共産党事件で検挙され,獄中で体験を生かした小説の執筆に励む。1925年出獄後,「淫売婦」や「セメント樽の中の手紙」を『文芸戦線』に発表,『海に生くる人々』を出版し,一躍文壇の新進作家となる。プロレタリア文学運動が『戦旗』派と『文芸戦線』派に分裂した時も,一貫して『文芸戦線』派に属し,その代表的な作家として活躍。1934年,長野県に移住,信州,木曾を転々としながら創作活動を行い,民衆作家として成熟する。1944年,開拓移民として満州に渡り,1945年10月,引揚げ列車の中で病死(52歳)した。


【編者紹介】三人の会(堺利彦・葉山嘉樹・鶴田知也の三人の偉業を顕彰する会)

福岡県京都郡豊津町(現・みやこ町)出身の堺利彦・葉山嘉樹・鶴田知也の顕彰と研究を行っている市民活動団体。1956年堺利彦顕彰会として発足し,1960年堺利彦記念碑,1973年堺利彦顕彰記念館,1977年葉山嘉樹文学碑,1992年鶴田知也文学碑をいずれも当時の豊津町に建立。1995年「堺利彦・葉山嘉樹・鶴田知也の三人の偉業を顕彰する会」と改称。2002年堺利彦顕彰記念館を休館とし所蔵資料を豊津町歴史民俗資料館(現・みやこ町歴史民俗博物館)に寄託。行政との協働により,「生きる葉山嘉樹」(2000年),「鶴田知也生誕100年記念シンポジウム」(2002年),「堺利彦生誕140年/大逆事件・売文社創設100年記念講演会」(2010年),「プロレタリア作家葉山嘉樹と現代」(2011年)などのシンポジウム,講演会などを開催し,市民に対する学習機会を提供。本書では所蔵関係資料を初公開した。連絡先=みやこ町歴史民俗博物館

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