『印刷文化の黎明:インキュナブラからキリシタン版まで〈西南学院大学博物館研究叢書〉』
■下園知弥・勝野みずほ編
■西南学院大学博物館発行
■本体600円+税/A5判変型/48ページ /小口折並製本/オールカラー図録
■ISBN978-4-910038-54-4 C0000
■2022.6刊
■西南学院大学博物館研究叢書→こちら
グーテンベルクが活版印刷術を完成させて以降,1500年までに印刷された書物を「インキュナブラ」と呼ぶ。インキュナブラは今日の印刷本の祖先であるが,挿絵や装飾が手作業で描き込まれるなど,印刷本と写本の両方の性質を併せ持っていた。
活版印刷術はヨーロッパの諸都市に伝播し,1590(天正18)年には布教のため来日したイエズス会の巡察師ヴァリニャーノの発案によって日本にもたらされた。キリシタンたちが印刷・出版した書物を「キリシタン版」と総称し,1591ー1610年頃までに50タイトル以上の書物が印刷されたと考えられている。
かつての面影を残しながらも変化していく書物のすがたを通し,西洋印刷文化の黎明期に迫る。
【2022年度西南学院大学博物館企画展T図録】
ご挨拶
西南学院大学博物館では,2006(平成18)年の開館以来,キリスト教文化・日本キリスト教史・ユダヤ教祭具・地域文化といったさまざまな分野の資料を収集し,調査研究を行い,展示教育活動につなげています。西南学院大学博物館の所蔵資料の中にはインキュナブラ(初期の活版印刷本)に関するまとまった数のコレクションがあり,その一端は2017年開催の「キリスト教の祈りと芸術」や2019年開催の「宗教改革と印刷革命」といった展覧会で紹介してきました。しかし,西南学院大学博物館が所蔵するインキュナブラのコレクションを一つの展覧会ですべて出品したことは過去に無く,本展がその初の機会となります。
「印刷文化」をテーマとする本展では,インキュナブラのみならず,印刷本に先立ってヨーロッパで普及し初期活版印刷本の様式にも影響を与えた西洋写本や,キリシタン時代に日本で印刷されたキリシタン版など,さまざまな関連資料も展示しています。ありし日の書物のすがたを紹介する本展が,長い歴史を経てこれからも継承されていく印刷文化についての理解の一助となれば幸いです。
末筆ではございますが,本展覧会の開催にあたって,ご協力を賜りました関係各位に厚く御礼を申し上げます。
西南学院大学博物館館長 伊藤慎二
もくじ
ごあいさつ[西南学院大学博物館館長 伊藤慎二]
第1章 写本から印刷本へ
【トピック】「印刷革命」以後の写本たち[西南学院大学博物館教員 下園知弥]
第2章 印刷都市の拡大
第1節 Nürnberg
第2節 Venezia
【トピック】黎明期の「書籍市場」[西南学院大学博物館学芸調査員 勝野みずほ]
第3章 日本伝来
【トピック】日本における木版印刷:奈良時代から江戸時代まで[西南学院大学博物館学芸研究員 鬼束芽依]
寄稿 歴史を歩んだ「活字文化」:活版印刷の現場から[文林堂店主 山田善之]