図書出版

花乱社

『九州文学 576号;2021年夏号』九州文学同人会編・発行

 

■本体1000円+税/A5判/184ぺージ/並製
■ISBN978-4-910038-33-9 C9095
■2021.7刊
■九州文学HP  https://kyushu-bungaku.com/

火野葦平や劉寒吉らを輩出し、82年の伝統を持つ九州発信の文芸誌『九州文学』576号。
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九州文學は1938年(昭和13年)、福岡県を中心に活動する火野葦平、劉寒吉、岩下俊作、原田種夫らによって創刊。以来、昭和・平成・令和と継承されていき、詩、俳句、小説と多くの作家が切磋琢磨して、創り上げてきました。2020年7月より第八期として新しく船出し本誌もリニューアル。80年の伝統を守りつつ、今後も豊かな言語芸術を志して参ります。


■もくじ

【巻頭詩】
 七月の海辺[柴田康弘]
【詩】
 あの日は忘れない[高森 保]
 おだやかな朝[秋山喜文]
 男と女の手[松野弘子]
 産土[坪井勝男]
 北帰行[林 恭子]
 涙涸れ砕けちる季節に[麻田春太]
 クェゼリン環礁[金子秀俊]
【随想】
 ゆびさきに、メロディーに魅せられて[木村 咲]
 生き方変えます[八重瀬けい]
【掌編】
 山の、夜の、星の、[山人海人]
【小説】 
 初 嵐[佐々木信子]
 ご飯が美味しくいただけて[末次鎮衣]
 優しいお墓[深水由美子]
【俳句】
 てん突出した心の風[麻田春庵]
 炎へ立ちぬ[中園 倫]
【短歌】
 天正遣欧少年使節[中村重義]
【小説】
 錯 乱[小泊有希]
 ある日 思わぬことが[今給黎靖子]
 海 影[中野和久]
【評論】
 身体 魂 死 『図説 人体イメージの変遷』を読む[屋代彰子]
【コラム】五十年/座るべきか 座らざるべきか/柴犬ゴン

■運営・編集委員会便り
第5回「安川電機九州文学賞」、令和2年度「九州文学年度賞」選考結果
575号への時評・季評抜粋
編集後記他




巻頭詩

 七月の海辺

あほう鳥の群れが次々と
落ちていく
空のクレバスに

崩れていく積乱雲の彼方

漁師たちが仰ぎ見る
視界の陥穽(かんせい)さながらの
さかまく海上の竜巻

時代の鋭利な失敗のように
失われた空が
黒潮の流れを鈍く狂わせて

停滞するぼくらの焦燥を
海の嵐が
ことごとく吹き散らしていった

その酷薄な夜風のさなか
いま 荒海に
夏の環状星雲が渦巻いている

おおきな瞳の七月よ
まつ毛の向こうに秘められた
静かなねがいは

やがて
暁の海が迎えに来るだろう

   柴田康弘



九州文学同人会

『九州文学』は,1938年,福岡県を中心に活動する火野葦平,劉寒吉,岩下俊作,原田種夫らによって創刊。火野葦平は「糞尿譚」によって第6回の芥川賞を得,岩下俊作が『九州文学』に掲載した「富島松五郎伝」は度々映画化された「無法松」の原作である。その他多数の同人が芥川賞,直木賞の候補に挙げられ,九州を代表する同人誌として『九州文学』の全国的地位を確立させた。なお,邪馬台国論争に民間研究者が発言するきっかけとなった『まぼろしの邪馬台国』(宮崎康平)も『九州文学』に掲載されたものである。現在でも同人は全国各地の文学賞を受賞するなど活躍している。

問合せ先 e-meil 2kyubundojinkai@gmaik.com

九州文学HP  https://kyushu-bungaku.com/