図書出版

花乱社

『九州文学 578号;2022年春号』九州文学同人会編・発行

 

■本体1000円+税/A5判/228ぺージ/並製
■ISBN978-4-910038-48-3 C9095
■2022.3刊
■九州文学HP  https://kyushu-bungaku.com/

火野葦平や劉寒吉らを輩出し、82年の伝統を持つ九州発信の文芸誌『九州文学』578号。
 **
九州文學は1938年(昭和13年)、福岡県を中心に活動する火野葦平、劉寒吉、岩下俊作、原田種夫らによって創刊。以来、昭和・平成・令和と継承されていき、詩、俳句、小説と多くの作家が切磋琢磨して、創り上げてきました。2020年7月より第八期として新しく船出し本誌もリニューアル。80年の伝統を守りつつ、今後も豊かな言語芸術を志して参ります。





目次

【巻頭詩】
 今 本当にいい時[秋山喜文]
【詩】
 水 面[柴田康弘]
 春を待つ[麻田春太]
 すがるのは[林 恭子]
 蘇花公路[金子秀俊]
 いわなければよかった[松野弘子]
【随想】
 奥八女の里"ちゃらんけ"小噺の件[椎窓たけし]
 ひらめきセンサー[岸川瑞恵]
 林 檎[屋代彰子]
 金靴屋さん[木村 咲]
 健康寿命と地域づくり[高森 保]
【俳句】
 伊良戸山遠望[椎窓たけし]
 酒機嫌[中園 倫]
 春 愁[麻田春庵]
【短歌】
 寸感抄[中村重義]
【掌編】
 不穏な夢[野見山悠紀彦]
 人 形[今給黎靖子]
 メンタルヘルス担当者のメンタルヘルス[木島丈雄]
【小説】
 いしのうへ[前編][木澤 千]
 新受胎[城戸祐介]
 カジュエロ町のサントス[T][永井竜造]
 落魄の山河[小泊有希]
 赤チンの歌[宮川行志]
 かくれがま[園田明男]
【コラム】なぜ釣りをするのか/袖返す戀でした/一千八十七名
 [訃報]椎窓猛さん…九州文学編集委員一同

■運営・編集委員会便り 
《参加報告》第4回全国同人雑誌会議・第1回全国同人雑誌協議会
既刊号への時評・季評抜粋
令和3年度九州文学年度賞決定/編集後記 他



巻頭詩

 今 本当にいい時 [秋山喜文]

高校・大学と同期生だったM君は今
完全な認知症になり
たずねて行っても私のことを認識できず
知らん顔をしている
悲しいことだ
あんなに親しかったのに

すでに私も認知症が始まっているそうだが
自分でもわかる
用心はしているのだが
用心が不十分のようで

世の中一見平和
がんばろうと思うが
北朝鮮・中国・中東地域などなど
一触即発 どうなるかわからない

静かな明け暮れの今を大事にして
自分にできることをしなければならない
本当にわかっているのか君!(私?)


[訃報]椎窓猛さん より(抜粋)

 『九州文学』同人の大先輩である椎窓猛さんが去る一月二十七日、お亡くなりになりました。九十二歳でした。
 椎窓さんは福岡県矢部村のご出身で、小学校教諭を経て、旧矢部村教育長を十六年間務められました。詩人や童話作家として活動され、数多くの文学的功績を残されました。
 『九州文学』との関わりは古く、椎窓さんは第六期から入会。一時退会されていましたが、第七期に再入会されました。その際、「九州文學」の題字を揮毫していただき、この題字は第八期の我々も掲げさせていただいております。
 第七期において、随筆の連作、「気まぐれ文学館」、続いて、「天窓舎“走馬灯”季録」をほぼ毎号にわたり執筆されました。その中で、椎窓さんは自らを、「平作家」、「平詩人」、「老文学青年」という呼称が当を得ているとおっしゃっています。「平作家」というのは、蔑称ではなく、「印税収入によって休息する余裕を持たず」、「いかに書いても、あらゆる意味で『特権』というものを持ち得なかった平作家」(広津和郎の「徳田秋声論」)という意味での「平作家」なのですが、椎窓さんは、ある意味「平作家」を貫いたと言えるのではないでしょうか。
 そんな椎窓さんだからこそ、我々を見る目線はとても優しかったと思うのです。椎窓さんの随筆には『九州文学』への言及も多く、ことのほか愛着をもっておられたことがよくわかります。『九州文学』に対する親身の情愛は、第七期を引き継いだ私たちにも注がれ、第八期575号の巻頭詩を依頼した時には、「第八期『九州文学』出版祝唄」と題した詩をすぐに寄せていただき、我々を励ましていただきました。
 我々『九州文学』同人の精神的拠りどころであった椎窓さんのご逝去を悼み、慎んでご冥福をお祈り申し上げます。
                                    [九州文学編集委員一同]


九州文学同人会

『九州文学』は,1938年,福岡県を中心に活動する火野葦平,劉寒吉,岩下俊作,原田種夫らによって創刊。火野葦平は「糞尿譚」によって第6回の芥川賞を得,岩下俊作が『九州文学』に掲載した「富島松五郎伝」は度々映画化された「無法松」の原作である。その他多数の同人が芥川賞,直木賞の候補に挙げられ,九州を代表する同人誌として『九州文学』の全国的地位を確立させた。なお,邪馬台国論争に民間研究者が発言するきっかけとなった『まぼろしの邪馬台国』(宮崎康平)も『九州文学』に掲載されたものである。現在でも同人は全国各地の文学賞を受賞するなど活躍している。

問合せ先 e-meil 2kyubundojinkai@gmaik.com

九州文学HP  https://kyushu-bungaku.com/