『九州文学 579号;2022年夏号』九州文学同人会編・発行
■本体1000円+税/A5判/216ぺージ/並製
■ISBN978-4-910038-56-8 C9095
■2022.7刊
■九州文学HP https://kyushu-bungaku.com/
火野葦平や劉寒吉らを輩出し、82年の伝統を持つ九州発信の文芸誌『九州文学』579号。
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九州文學は1938年(昭和13年)、福岡県を中心に活動する火野葦平、劉寒吉、岩下俊作、原田種夫らによって創刊。以来、昭和・平成・令和と継承されていき、詩、俳句、小説と多くの作家が切磋琢磨して、創り上げてきました。2020年7月より第八期として新しく船出し本誌もリニューアル。80年の伝統を守りつつ、今後も豊かな言語芸術を志して参ります。
目次
【巻頭詩】
なんでもない言葉が[松野弘子]
【詩】
静かなる男逝く[麻田春太]
鐘のひびきに[柴田康弘]
九十歳をどう生きるか[秋山喜文]
花 筏[松野弘子]
【随想】
ホモ・ディスケンス[屋代彰子]
言葉の力 絵の力[由比和子]
【俳句】
夏の忘れもの[麻田春庵]
蛍 舟[中園 倫]
【短歌】
偶 感[中村重義]
【掌編】
余 白[木村 咲]
鍵[今給黎靖子]
【小説】
ふたり飯[中野和久]
いしのうへ[中編][木澤 千]
カジュエロ町のサントス[U][永井竜造]
ヒルガオ[佐々木信子]
ある朝目覚めたら[深水由美子]
カモガヤオヤジ騒動記[野見山悠紀彦]
ゲバラ[神浮スけし]
【コラム】
英国外交官の見た維新前夜/診察室
■運営・編集 委員会便り
577、578号への時評・季評抜粋
編集後記 他
巻頭詩
なんでもない言葉[松野弘子]
卓袱台の前に座った
母の口が動いている
こんもりと鉢に盛った
里芋の煮しめが
心なしか減っている
朝食の箸を並べながら
さりげなく声をかけると
急に口の動きが止まって
ぼんやりした顔になる
小さな背中が丸くなる
こんな時 ふと思い出す
私の幼なかった日々のことを
なにかひとつ出来るようになれば
ほめられ
ふたつ出来るようになれば
頭を撫でてくれた
温かく ふっくらした掌
あんなふうに
たった 今
私にも何かないか
母のにっこりするような
母がほっこりするような
なんでもない言葉が──
九州文学同人会
『九州文学』は,1938年,福岡県を中心に活動する火野葦平,劉寒吉,岩下俊作,原田種夫らによって創刊。火野葦平は「糞尿譚」によって第6回の芥川賞を得,岩下俊作が『九州文学』に掲載した「富島松五郎伝」は度々映画化された「無法松」の原作である。その他多数の同人が芥川賞,直木賞の候補に挙げられ,九州を代表する同人誌として『九州文学』の全国的地位を確立させた。なお,邪馬台国論争に民間研究者が発言するきっかけとなった『まぼろしの邪馬台国』(宮崎康平)も『九州文学』に掲載されたものである。現在でも同人は全国各地の文学賞を受賞するなど活躍している。
問合せ先 e-meil 2kyubundojinkai@gmaik.com
九州文学HP https://kyushu-bungaku.com/