『九州文学 581号:2023年春号』九州文学同人会編・発行
■本体1000円+税/A5判/255ぺージ/並製
■ISBN978-4-910038-73-5 C9095
■2023.3刊
■九州文学HP https://kyushu-bungaku.com/
火野葦平や劉寒吉らを輩出し、82年の伝統を持つ九州発信の文芸誌『九州文学』581号。
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九州文學は1938年(昭和13年)、福岡県を中心に活動する火野葦平、劉寒吉、岩下俊作、原田種夫らによって創刊。以来、昭和・平成・令和と継承されていき、詩、俳句、小説と多くの作家が切磋琢磨して、創り上げてきました。2020年7月より第八期として新しく船出し本誌もリニューアル。80年の伝統を守りつつ、今後も豊かな言語芸術を志して参ります。
目次
【巻頭詩】
春 日[金子秀俊]
【詩】
冬の隧道[柴田康弘]
蜘蛛と生きる[麻田春太]
今年の秋の その向こう[松野弘子]
まだまだ大変だ[秋山喜文]
ヘルペス体験[高森 保]
花 桃[本田雅子]
【俳句】
春燦々と[麻田春庵]
奴 凧[中園 倫]
【短歌】
湖東三山[中村重義]
【随想】
鬼 灯[園田明男]
山開きの日[木村 咲]
初めて[井野光憲]
■科学エッセイ お化けのエネルギー[屋代彰子]
【掌編】
雨後晴[今給黎靖子]
【小説】
雪華の声[野見山悠紀彦]
南阿蘇戦記[塚元秀樹]
ロスコの部[屋上村信広]
もう一つの世界[二][緑川すゞ子]
カジュエロ町のサントス 南十字星の下 熱砂の祈り[W][永井竜造]
船島(巌流島)の決闘・異聞[宮川行志]
戦国スケッチ(1) 放ち討ち[箱嶌八郎]
【コラム】オートバイ/運気とおみくじ/ユーチューブ・ミュージック
■編集委員会便り
編集後記 他
巻頭詩
春 日[金子秀俊]
天皇誕生日の午後のことである
私は我家へ向かう坂道を下っていた
二人の男の子が手をつないで坂を上って来る
一人は小学校の高学年と思われる
一人はまだ学校にあがらないぐらいの小さな子
小さい方の子が上を向いて大きい方の子に
けんめいに何か話している
大きい方の子はやや腰をかがめて聞いている
私とすれ違おうとする時
大きい方の子が
「こんにちは」と
突然あいさつをした
私は驚いて
「こんにちは」と応える
「兄弟ですか」
私がたずねると
「はい」
兄が答えた
二人はゆっくりと坂をのぼっていく
私は二人を見て思った
二人の両親はどんな人だろう
あたたかい光があふれる思いがした
九州文学同人会
『九州文学』は,1938年,福岡県を中心に活動する火野葦平,劉寒吉,岩下俊作,原田種夫らによって創刊。火野葦平は「糞尿譚」によって第6回の芥川賞を得,岩下俊作が『九州文学』に掲載した「富島松五郎伝」は度々映画化された「無法松」の原作である。その他多数の同人が芥川賞,直木賞の候補に挙げられ,九州を代表する同人誌として『九州文学』の全国的地位を確立させた。なお,邪馬台国論争に民間研究者が発言するきっかけとなった『まぼろしの邪馬台国』(宮崎康平)も『九州文学』に掲載されたものである。現在でも同人は全国各地の文学賞を受賞するなど活躍している。
問合せ先 e-meil 2kyubundojinkai@gmaik.com
九州文学HP https://kyushu-bungaku.com/