図書出版

花乱社

『金のオタマジャクシ、そして感性の対話:世界に音楽が必要な理由』近藤 薫 著

■本体2200円+税/四六判/300ぺージ(グラビア4ページ)/並製
■ISBN978-4-910038-32-2 C0095
■書評:「西日本新聞」2021.8.7

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本書は,自然との乖離に追いやられた人が再び自然と調和・共存し,本来の人間性を回帰するための架け橋が何であるかを問いかける(序文より)
 [東京大学先端科学技術研究センター所長 神崎亮平氏]

「いつからだったろう、私の暮らす日本において、クラシック音楽は社会の中でのアイデンティティを確立できずにいる、いや、正確には見失っていると感じるようになっていた。」
ヒト、社会にとって芸術とは何か。生きることに音楽は不要なのか──。
認知能力のみで閉じられた状態から,感性を開き,芸術を表出させ問いつづけること。それこそが未来へのキーワード。音楽家が体験する奇跡の世界,東大先端研での取組みについて紹介し,各分野第一人者らと教育,言語,テクノロジーなど分野を横断して対談,感性と音楽の可能性について探る。

◎東京フィル・コンサートマスター近藤薫氏著作の初の単行本化



【対談】
 A .バッティストーニ氏(東京フィル・首席指揮者)
 中邑賢龍氏(東京大学 先端研 特例教授)
 佐々木理恵氏(NHK福岡放送局キャスター) 
 川阜城氏(Bar The TRADマスター)
 古橋洋人氏(楽天グループ株式会社 常務執行役員)



もくじ


序文 東京大学先端科学技術研究センター所長 神崎亮平
まえがき 社会にとって芸術とは何か

【T】感性の時代  このいわく言い難いものこそ
 今こそ芸術を語る/芸術とは何か Art Origin と Art Expression
 東京大学先端研のヒマラヤ杉 円融無礙の時代/リモートオーケストラというコンセプト・アート
 感性の時代/エントロピー増大の法則を、社会に当てはめる
 社会と芸術のリバランス

【U】感性の対話
 音楽は自分自身が誰かということを聞くこと 
    対話者:東京フィル首席指揮者 アンドレア・バッティストーニ氏
 “変わった子ども”が心を開く時 異才発掘プロジェクトROCKET 
    対話者:東京大学先端研特例教授 中邑賢龍氏
 言葉や音楽は、発信者の見えないものも伝わる
    対話者:NHK福岡放送局キャスター 佐々木理恵氏 
 五感に働きかける総合芸術・酒場と音楽
    対話者:Bar The TRADマスター 川阜城氏
 テクノロジーの未来、問題を見つけるために芸術がある
    対話者:楽天グループ株式会社 常務執行役員 古橋洋人氏

【V】金のオタマジャクシ 秘密の音符を探す僕の旅
 ゴールデン・ノート/道しるべ/便 利
 ちかしオケ/本 番/ピンとポン
 小値賀にて/九 響/すぎやま先生
 非効率の芸術/ラジオ体操/BGM ほか


本文より

 生物は開かれた状態でエントロピーと負エントロピーによって秩序と無秩序の絶妙のバランスを保ち、新陳代謝というサイクルをグルグル回しながら生存している。
 そう、この開かれた状態でのバランスこそが私たちの未来のキーワードとなる。現代の社会は科学技術の発展と共に解を集積してきたわけだが、生きた社会、生物としてヒトが存在できる社会を構築するには、解と同量の「問」が必要ということになる。
 さて、ここで芸術の出番だ。解を持たないものが問であるとしたら、解を持たないない芸術は問であると言える。問と解のバランスを保ち続けられる社会を作ることが出来れば、人類は社会という環境を崩壊させることなく生存できる。これが本当の持続可能な社会のあるべき姿であろう。社会が認知科学的に発展すればするほどに、芸術という、よくわからない、体系化どころかその本質である感性は認知することもできない、そんな摩訶不思議な存在がさらに重要性を帯びることになるのだ。
 我々はどこに立ち戻るべきか? つまり、我々はどこから来たのか? 古来から人類に課せられた、もしかしたら人類最初の 「Why?」だった可能性のあるこの問。芸術が教えてくれるのはこの問そのものでもある。現代において私たちは、認知能力だけで構築されがちな社会という、閉じた状態から抜け出し、感性を開き、芸術を表出させ問い続けるべきだ。
(「T 感性の時代 このいわく言い難いものこそ」より抜粋)


 

【著者紹介】近藤 薫(こんどう・かおる)

1980年生まれ。東京藝術大学をアカンサス賞を受賞して卒業後,同大学大学院修士課程修了。現在,東京フィルハーモニー交響楽団コンサートマスター,フューチャー・オーケストラ・クラシックスコンサートマスター,バンクーバー・メトロポリタン・オーケストラ首席客演コンサートマスター。長野市芸術館レジデントカルテットリヴァラン弦楽四重奏団主宰。全日本学生音楽コンクール,日本香港国際音楽コンクール,刈谷国際音楽コンクール審査員,東京音楽大学・洗足学園音楽大学非常勤講師,東京大学先端研特任教授。