図書出版

花乱社

『暗闇に耐える思想 松下竜一講演録』

 


■本体1400円+税/A5判/160頁/ 並製 ★在庫僅少
■花乱社選書1
■編者=新木安利・梶原得三郎・藤永 伸
■ISBN978-4-905327-13-4 C0095
■各紙に紹介されました
「毎日新聞」2014.8.1 「赤旗」2014.1.25 「9条連ニュース」No.218 2.20
「図書新聞」3.21 都市文明の光明に抗する「暗闇の思想」の狼煙
「毎日新聞」3.20 電力依存社会に警鐘 「信濃毎日新聞」3.11
「熊本日日新聞」3.11 新たな“豊かさ”の在り方を提言
「出版ニュース」2月下旬号 弱き者の立場に立つ姿勢 「西日本新聞」読書欄1.22
「中日新聞」1.31 ほか

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「月に一夜でも、〈暗闇の思想〉に沈み込み、今の明るさの文化が虚妄ではないのかどうか、ひえびえとするまで思惟してみようではないか—」
東大入学式講演、「暗闇の思想 1991」ほか、ひとりの生活者として発言・行動しつづけた記録文学者が、今改めて私たちに問いかける。

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 松下竜一氏は、今も読み継がれている歌文集『豆腐屋の四季』で作家として出発、以降、『風成の女たち』、『砦に拠る』、『ルイズ─父に貰いし名は』、『記憶の闇』、『狼煙を見よ─東アジア反日武装戦線"狼"部隊』など、時代状況を見据えた重厚なノンフィクション作品を発表、2004年に死去した記録文学者です。
 著述家としての松下さんの歩みは、ある面、『豆腐屋の四季』のテレビ・ドラマ化がもたらした"模範青年"像からの脱皮の道程であり、その一つのエポックとなったのが、1972年の新聞寄稿「暗闇の思想」だと言っていいかと思います。以降松下さんは、豊前火力反対の旗を掲げ、環境権裁判を12年間にわたって闘い、個人誌『草の根通信』を発行しつづけることで、「反戦・反核・反原発」運動を代表する一人となっていきます。
 「いわば、発展とか開発とかが、明るい未来をひらく都会志向のキャッチフレーズで喧伝されるのなら、それとは逆方向の、むしろふるさとへの回帰、村の暗がりをもなつかしいとする反開発志向の奥底には、〈暗闇の思想〉があらねばなるまい。まず、電力がとめどなく必要なのだという現代の絶対神話から打ち破らねばならぬ。ひとつは経済成長に抑制を課すことで、ひとつは自身の文化生活なるものへの厳しい反省で、それは可能となろう」(「暗闇の思想」)
 本書は、この「暗闇の思想」を巻頭に置き、以後1973〜99年の間になされた代表的な講演7本を収めたものです。あくまで一人の人間として、弱きものとその生活を守る側に立とうという姿勢を貫いた松下氏の言葉が、とりわけ、この厳しい時代を生きる若い方々に届くならば嬉しいことです。


    【目次】
    1. 私の現場主義
    2. 豊前火力と闘う
    3. 暗闇の思想 1991
    4. 私はなぜ記録文学を書くか
    5. 伊藤ルイさんを語る
    6. 弱い人間として
    7. 私の中の弱さとの闘い
    8. 講演記録・初出一覧
    9. 松下竜一略年譜 
    10. 出会いの業 解説にかえて [藤永 伸]

     

    【本文より】 チェルノブイリの原発事故が世界に向かって明らかにしたことは、核兵器と核の平和利用といわれる原発とは、全く同じものなんだということであります。つまり一○○万キロワットの原発が一年間動けば、その炉内には広島型原爆一〇〇〇発分の死の灰が貯まります。それがあの時、世界に撒き散らされてしまった。
     そして今や、放射能に汚染された食品が世界中に出回っている。ここでもまた、繁栄している国と低開発の国との問題が生じてきております。自分たちが原発を動かし、核のゴミを、核廃棄物をどんどん産み出しながら豊かな生活を送っている。そしてその結果、放射能汚染の食品が出てくると、それらの食品を低開発国に押しつけて、逆に自分たちは豊かな資力によって安全な食品を確保しようとする。回り回って、放射能に汚染された食品が原発を持たない国々に行ってしまう。
     ……
     私は、若い皆さんがこういう問題に対してあまり関心を抱かないことを、どう考えればいいのか分かりません。今や核の問題というのは、それこそ、これからの時代を担う皆さんの双肩にかかってくる、そういう問題であるはずなんです。明日にも、チェルノブイリ級の事故が、日本のどこかの原発で起きるかもしれない。その時にはもうこの狭い日本列島、どこにもその汚染から逃れる場所はありません。そういう状況に対して、なぜ若い人たちが声を挙げないのか、と思わざるを得ません。(「私の現場主義」)

     


    【著者紹介】 松下竜一〈1937-2004〉

    歌文集『豆腐屋の四季』でデビュー。豆腐屋を14年間続けた後、1970年、"模範青年"を脱皮して、作家宣言。生活(いのちき)の中の小さな詩を書き綴ったエッセイと、重厚な記録文学を書き続ける。「暗闇の思想」を提唱して豊前火力反対運動・環境権裁判を闘い、『草の根通信』を31年間発行、反戦・反核・反原発の闘いに邁進する。その闘いの原点は『豆腐屋の四季』にある。弱い人間の闘い方とは、局面負けたとしても、自分を信じ、仲間を信じ、未来を信じることである。3.11福島原発事故以後、若い世代にも「暗闇の思想」が読み直されている。「だれかの健康を害してしか成り立たぬような文化生活であるのならば、その文化生活をこそ問い直さねばならぬ」

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