図書出版

花乱社

『村上仏山と水哉園:新発見資料と郷土の文献』城戸淳一著

■本体2000円+税/四六判/286ページ/上製
■ISBN978-4-910038-17-9 C0095
■2020.10刊
■書評・紹介:「西日本新聞」2020.10.17
■著書:『京築の文学群像』

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郷土・美夜古(みやこ)が生んだ偉人の事蹟と交流
村上仏山は福岡の幕末期の漢詩人・教育者。京都郡上稗田村(現行橋市)に出まれ,秋月の原古処・白圭采蘋に学び,福岡亀井塾の昭陽や肥前多久の草場佩川らと交わる。26歳にて郷里に私塾「水哉園」を設立,全国的にも知られて門弟三千人を超えるともいわれ,末松謙澄,吉田健作・学軒,安広伴一郎,杉山貞ら優れた人材を輩出した。
新発見の水哉園「席序」,義弟宛書簡など一次資料を駆使して郷土の偉人の事蹟と交流を辿り,併せて関係文献を総覧した,近代文学・教育史研究の成果。

【目次】
刊行に寄せて 小倉郷土会会長 馬渡博親氏
まえがき

T 村上仏山と私塾・水哉園
 村上仏山と水哉園/私塾・水哉園/【新資料】水哉園の「席序」 
 村上仏山の書簡 義弟・安広仙杖宛

U 水哉園を訪れた人々
 はじめに/楠本碩水/久坂玄瑞/池内陶所
 南摩羽峰/原 采蘋/八条半坡/長梅外・長三洲親子
 釈 白蓮/河野鉄兜/西 鼓岳/後藤素行(素一)
 吉雄 敦(菊瀕)/小野寺善言/友石、堂と晩翠社/結び

V 仏山作品の研究と伝播
 はじめに
 仏山の著作と作品集
  『仏山堂詩鈔』/『仏山堂遺稿』上・下/仏山の書
 仏山が関わった本
 『福博新詞 完』/『明治名家詩選』/『梅隠亭詩鈔』/『東遊草』
 詞華集にみる仏山詩
  《幕末期》
   『文久二十六家絶句』上・中・下
  《明治》
   『皇朝分類 名家絶句』/『明治三十八家絶句』上・中・下
   『明治新撰今世名家詩鈔』上・中・下/『明治百二十家絶句』六巻
   『東瀛詩選』/『詩文精華』/『彦山勝景古今百名家詩集』/『和漢名詩鈔』
  《大正》
   『和漢名詩類選評釈』/『寵光余影』/『仏山先生贈位祭典記念仏山堂遺稿刊成詩集』
  《昭和》
   『新註皇学叢書 第九巻』/『東西名詩集/吟詠漢詩集』
   『日本名詩抄』/『漢詩 名詩評釈集成宋代金代 元代明代清代五山江戸』
   『精神作興興国朗吟撰集』/『江戸後期の詩人たち』
   『日本漢詩』上・下/『日本漢詩選』
   『日本漢詩鑑賞辞典』/『詞華集日本漢詩 第八巻(絶句集)』

W 仏山ゆかりの人と書物 
 戸原卯橘/鉅野先生/吉田平陽/末松謙澄
 佐佐木高美/八条半坡/広瀬淡窓/月形 覚
 吉田学軒v吉田健作/藤江吉郎助と「魚楽園」
 守田蓑洲/杉山 貞

初出一覧
あとがき

 

【本文より】

 美夜古地方(行橋市、みやこ町、苅田町)は、幕末より近代までまさに人材の淵藪ともいうべき地であります。城戸さんは、その郷土の近代文学史を地道に研究、調査されてきました。その探求心には敬意を以って感銘を覚えます。
 城戸さんは一次史料(古文書・古記録)を非常に大切にされます。これは自分一人だけの収集には限界があり、多くの郷土史研究者との交流や情報交換が欠かせないからです。
 村上仏山先生は三千人ともいわれる門下生のほか、多くの漢学者、漢詩人と交流されています。それらの人々やその子孫の功績や事跡を調査することは、我々の任務でありましょう。
 ─「刊行に寄せて」(小倉郷土会会長 馬渡博親氏)より抜粋

 * *

 京築地域(福岡県東部に位置する行橋市、豊前市、京都郡、築上郡の二市五町)では村上仏山や「水哉園」のことをいろいろなところで耳にする。美夜古郷土史学校の講義でも、さまざまな人たちの研究を見聞きしてきた。だが、なんといっても村上仏山については、友石孝之先生の著書『村上仏山─ある偉人の生涯』(美夜古文化懇話会、一九五五年)が、難しい内容をやさしくまとめた最も信頼のできる研究書であり、さらに古賀武夫先生の『村上仏山を巡る人々─幕末豊前の農村社会』(私家版、一九九〇年)が出版されて、仏山と「水哉園」のことをかなり詳しく知ることができるようになった。(略)
 定年退職後、行橋市史編纂室の白石壽先生のもとで市史編纂を手伝うようになって、郷土史について広く勉強することができた。村上仏山の資料にも目を通す機会ができたのは幸いであった。今まで自分で少しずつ集めていた資料にもつながりができてきた。その後、古書の葦書房店主・宮徹男氏、同じく今井書店主・今井敏男氏のご厚意で、探し求めていた水哉園の「席序」を入手にすることができ、水哉園の研究を一歩前進させることができた。
 さらにご両人には、『仏山堂詩鈔 初編』刊行前後の仏山の義弟・安広仙杖宛の書簡を譲っていただいた。これは断片的なものではあるが、貴重な資料である。本書では「村上仏山の書簡」の項で取り上げている。
 ─「まえがき」より抜粋



 

【著者紹介】城戸淳一 (きど・じゅんいち)

1941年,福岡県行橋市に生まれる。
1963年,北九州市立大学卒業。
高等学校教諭として38年間つとめ,その間,司書,司書教諭資格を取得し,図書館教育にも携わる。
定年退職後,行橋市史編纂室,行橋市図書館長,福岡県文化財保護指導員をつとめる。
現在,美夜古郷土史学校,かんだ郷土史研究会,小倉郷土会などの会員。行橋市文化財調査委員。
著書に『京築文学抄』(美夜古郷土史学校,1984年),『京築の文学風土』(海鳥社,2006年),共著に『京築文化考』(海鳥社,2002年),『京築を歩く』(海鳥社,2005年),『図説・田川京築の歴史』(郷土出版,2006年),『京築の文学群像』(花乱社,2020年)など。