『人間が好き』 植木好正画集
■本体2500円+税/A4判変型/64頁/並製
■ISBN978-4-905327-05-9 C0071
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懐かしくて,不思議な人と街を描き続けて40年。大真面目だからこそ,どこか可笑しく,愛情たっぷりだからこそ,どこか毒がある。人間世界への愛情とペーソスに満ちあふれた画集。エッセイも収録。
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何故絵を描くのか,と聞かれても困ってしまう。強いて言えば,絵を描くことは,白いキャンバスを立て,何を描くか考え,それからデッサンして,ああでもない,こうでもないと,描いたり消したりして少しずつ描いていくと,ある日突然,完成する。
一から全て自分でやり遂げる,そこが良い。ほとんどが人物だが,日常生活に出てくる身近な人ばかりだ。
昔,酒屋をしていた頃,毎日角打ちに寄っていた繁ちゃん,週に一,二度はどろどろになって軽トラで送り届け,家の前に放り出してきた。
百二歳で死ぬまで頑固を貫いたマサノさん。段ボールが欲しいと言うので持って行ったら,「この泥棒!! 泥棒!!」と怒鳴られた。
炭坑の長屋で独り暮らしをしていた政時さん,いい男でちょっとヤクザな感じだったが,ある時,四十代の女の人が訪ねてきた。四十年前に古里に置いてきた娘だった。さすがに落ち込んで,その後何故か七面鳥を飼い始めた。
死んだ人,生きている人,今となってはみな懐かしい人たちだ。
絵を描くことは楽しいとは言えず,むしろ苦しい。でも落ち込んだりイライラした時,二時間程集中して筆を執ると,気持ちが落ち着くことは間違いない。筆も絵の具も選ばない,有る物を使う。
時々妻が,辛辣な批評をする。図星だと怒りが込み上げてくる。彼女が題を付けることもある。これは楽しい。
(「絵を描くこと」より)
【著者紹介】 植木好正(うえき・よしまさ)
1950年,福岡県田川市に生まれる。現在も田川市に在住,妻のナオエと仲良く暮らしている。1998年より1万人の似顔絵に取り組み,2011年5月現在で6964人となる。
画上左より「焼酎五尺」「さけくらい」「無量寿1」、下「マサノさんの来世」「光は雲のように空のように」