『昔日の岩下壮一・吉満義彦・遠藤周作:聖フィリッポ寮の日誌を読む』 沼倉延幸編著
■本体1800円+税/A5判/170頁/並製
■ISBN978-4-911429-12-9 C0023
■2025.8刊
【岩下壮一司祭叙階100年・哲学者吉満義彦没後80年・
作家遠藤周作受洗90年記念刊行】
カトリック司祭・哲学者の岩下壮一神父が1934年に創設した学生寮「聖フィリッポ寮」(白鳩寮)。愛弟子の哲学者吉満義彦が舎監を務め,ここで寮生として吉満の薫陶を受けた遠藤周作は文学を志す道が開かれた。この3人をはじめ寮生と上智大学の教授らの動静や取り巻く情勢を,吉満らが日誌等に簡要に書き留めていた。これらのアーカイブズの翻刻と解説を,初めて刊行する。
目次より
口絵
はしがき
解説篇
1 序
2 カトリック東京大司教区本部所蔵「岩下壮一神父関係資料」略解
3 「聖フヰリッポ寮庶務日誌」について
4 書翰【選】
5 総括と展望
6 主な参考文献一覧
資料翻刻篇
【凡例】
1 吉満義彦・渡辺秀筆記「聖フヰリッポ寮庶務日誌」
2 岩下壮一・吉満義彦関係書翰【選】 聖フィリッポ寮関係書翰のうち五通
あとがき
「はしがき」より
本書は、岩下壮一神父(一八八九〜一九四〇)がカトリック司祭に叙階された一九二五年六月六日から一〇〇年を迎えたことを機に、カトリック東京大司教区本部所蔵「岩下壮一神父関係資料」のうち「聖フヰリッポ寮庶務日誌」を中心とする未刊資料を紹介し、その翻刻と若干の解説を載せて刊行するものである。(略)
「聖フヰリッポ寮」(和名「白鳩寮)は、カトリックの聖人フィリッポ・ネリ(一五一五〜九五)の名を冠したカトリック学生寮で、一九三四年に東京で岩下壮一神父が創設し、一九四五年まで運営された施設であり、今日の真生会館の前身にあたる。この寮の舎監をカトリックの哲学者吉満義彦(一九〇四〜四五)が務め、一九四三年から一九四五年まで慶應義塾大学予科に在学中だった遠藤周作(一九二三〜九六)が在寮し、吉満との出会いにより文学を志す道を開かれて作家となる無二の出会いの場となったことも知られている。そこで、本書では、解説篇で「岩下壮一神父関係資料」の概要、伝来と整理をめぐる経緯等を略記し、次いで「日誌」と関連する書翰のうち五通の解説を載せた。資料翻刻篇では、この「日誌」と書翰五通の翻刻を載せた。(略)
岩下神父の司祭叙階一〇〇年を記念する年は、吉満の没後八〇年、遠藤の受洗九〇年にもあたる。近代日本のカトリシズムを代表する司祭岩下壮一と哲学者吉満義彦。キリスト教と日本人を主題とした純文学作品やユーモラスなエッセイ等で知られる作家遠藤周作。聖フィリッポ寮(白鳩寮)の「日誌」に、寮生だった遠藤の名が記されていることは従来知られておらず、「日誌」そのものについても断片的な紹介に留まっていた。本書で全容にふれていただき、岩下・吉満・遠藤を始め、「日誌」に記された登場人物の昔日の姿に思いを馳せる機会となれば幸いである。
【著者紹介】沼倉延幸(ぬまくら・のぶゆき)
東京都出身。青山学院大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程単位取得満期退学。元・宮内庁書陵部主任研究官。
専門分野:日本近世・近代史。特定歴史公文書等を含む歴史資料の調査研究。