図書出版

花乱社

旅路 [聞書]岩元則之物語』島村史孝著

■本体1300円+税/四六判/286ページ /上製本
■ISBN978-4-910038-92-6 C0023
■2024.7刊

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鹿児島に生きる──激動の「戦後史」を懸命に歩んだ一経済人の記録
戦渦の少年の日から、母と弟妹を支え、長じて鹿児島銀行に入行。
激動の昭和、平成、令和を経済人として一途に歩んだ。
人のため、地域経済のために信念を持ち、
多くの会社を立て直し、薩摩焼酎を全国ブランドに押し上げた。
時代を映すその足跡は、歴史の面影が残るこの地に降り積む。
そこにはいつも、悠久の桜島があった──



もくじ

はじめに:時代の空気を吸い、鹿児島の地に生きる[岩元則之]
岩元則之さんの『旅路』出版に寄せて:銀行員としても一流、経営者としても一流[東 清三郎]

第一章 生い立ちの記
第二章 硝煙のにおいの記憶
第三章 新しい日本の夜明け
第四章 時代と共に歩む銀行
第五章 変動する日本経済
第六章 使命感を持って働く
第七章 多角化経営で新境地
第八章 薩摩焼酎を世界へ
第九章 経営の心を伝える
第十章 鹿児島と私の人生

年譜/主な参考文献・資料
あとがきに代えて:『旅路』は、お父さまに贈る「ありがとう」のメッセージです[岩元弥生]


「はじめに──時代の空気を吸い、鹿児島の地に生きる」より

 
 私は昭和八(一九三三)年に生を受け、令和五(二〇二三)年十月一日に満九十歳の卒寿を迎えました。昭和八年といえば日本が国際連盟から脱退した年です。その後の歴史を考えれば、やがて始まる戦争を国民に予感させるものがあった時期かもしれません。そんな時代の空気の中で私は物心つき、戦時下にあっては硝煙のにおいをかぎ、敗戦後は焼け跡の闇市を行き来する少年期を送りました。
 父親は戦時中に亡くなりました。私は長男でしたから、母や弟妹たちを守り、暮らしを立てる責任がかかってきました。女手一つで子どもたちを育てる母への感謝の念を胸に抱き、十八歳で学業を終えると鹿児島興業銀行に入行します。内(家庭)にあっては一家の大黒柱であり、外(社会)にあっては焦土と化した鹿児島の戦後復興に関わる金融マン人生のスタートです。以来七十有余年。激しく変動を重ねた日本の「戦後史」を経済の世界で歩み通してきました。
 近年、私を知る近しい人から「岩元則之物語」を残しておいてはどうかという声をいただくようになりました。書くにしろ語るにしろ、自身の人生を物語化することには心もとない思いもありましたが、一つの時代を懸命に生きた仕事人の歩みを記録することに意味があるのであればと発起し、まとめたのが『旅路』です。私を育んでくれた風土や先人への思いにも触れ、また同人などからの執筆もいただきました。お読みくだされば幸いです。

 


【著者紹介】岩元則之(いわもと・のりゆき)

1933年生まれ。1952年、鹿児島興業銀行(鹿児島銀行前身)に入行。1989年、鹿児島銀行取締役営業本部営業統括部長。1991年、鹿児島協同倉庫代表取締役社長。1998年、鹿児島銀行監査役を経て、2005年から、さつま無双代表取締役社長・会長、三和酒造代表取締役社長・会長、鹿児島県酒造組合理事・鹿児島支部長、さつま座取締役会長、相良酒造取締役会長、無双蔵代表取締役社長・会長ほかを歴任。鹿児島市在住。


【著者紹介】島村史孝(しまむら・ふみたか)

1970年、西日本新聞社入社。福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、鹿児島、東京勤務。
聞書きに、安川寛『道草人生』、井上萬二『名陶無雑』、蒲地昭三『有田我が人生』、阿蘇惟之『火の国水の国』、須藤靖明『火山とともに』、高橋佳孝『草原と私たち』がある。