図書出版

花乱社

『福岡地方史研究 第59号』福岡地方史研究会編・発行

 

■本体1400円+税/A5判/148ページ/並製
■ISBN978-4-910038-38-4 C0021
■2021.9刊
バックナンバーも取り扱っております。どうぞお問い合わせください。

特集は「戦争の福岡」。戦争の福岡:火野葦平を通して、福岡県戦争遺跡調査について、軍都・小倉市の建物疎開、西伯利<シベリア>出兵史話、少国民の労働戦士聞き書き、福岡陸軍墓地、陸軍と特別大演習と福岡など。
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敗戦直後、日本に進駐したGHQは太平洋に視点を置く戦争史観を啓蒙し、現在の私たちはこの史観の中で戦争を考えているが、歴史的事実を正しく把握するためには、大東亜戦争史観に立たなければ、本当の日本の戦争は見えてこないのではないか。(「特集にあたって─太平洋戦争史観を検証する」より)


■もくじ
【絵葉書でたどる福岡の歴史S】大演習の絵図(行橋)(石瀧豊美)
喜多岡勇平暗殺の犯人(石瀧豊美)
【特集】戦争の福岡
 特集にあたって:太平洋戦争史観を検証する 
 戦争の福岡:火野葦平を通して(坂口 博)
 福岡県戦争遺跡調査について:文献調査の観点から(渡部邦昭)
 軍都・小倉市の建物疎開(梶原康久)
 西伯利〈シベリア〉出兵史話:世界史としての大正七、八年戦役と福岡(師岡司加幸)
 大東亜戦争前の小作争議:農民組合の関連性を軸に(濱田周作)
 少国民の労働戦士聞き書き:福岡市内国民学校高等科生徒の勤労動員(首藤卓茂)
 福岡陸軍墓地について(浦辺 登)
 陸軍特別大演習と福岡:高原謙次郎「大演習拝観記」の紹介(石瀧豊美)
【コラム】
 相島の忠霊塔(今村公亮)
 林えいだいと戦争 父・寅司を中心に(森川登美江)
 ある学徒兵の死(山下龍一)
 「巣鴨版画集」とBC級戦犯の獄中日記(青山英子)
【論文】
 幕末佐賀藩におけるいわゆるアームストロング砲の製造をめぐって(三):田中久重と石黒直寛関係史料および文献からのアプローチ(河本信雄)
【研究ノート】慶長期福岡藩の支城:一次史料と可視領域からの再検討(西田 博)
 古文書蒐集折々譚 その5 宮崎安貞を尋ねて(宮 徹男)
テレビ・ラジオのドキュメンタリー作品と地方史(上)(松尾允之)
短信往来▼今村公亮/河本信雄/向野正弘/西田 博/花田俊雄/馬場風R美/森川登美江
会員の本の紹介/例会卓話記録/編集後記


■特集にあたって─太平洋戦争史観を検証するより
 令和三年六月二十三日、七十六回目の慰霊の日を迎えた摩文仁の丘は雨だった。コロナ禍のため、式典は関係者三十数名に限られていた。正午を合図に黙祷をささげた後、一人の少女が参列者の前に立ち、自作の詩を読み上げた。「私は知っている 礎を撫でる皴の手が 何度も拭ってきた涙」。(略)
 七十六年前のこの日、沖縄防衛の任を帯びた第三十二軍の幕僚たちは、軍司令官とともにガマ(自然洞窟)の中で自決した。日本軍の組織的抵抗は終わったが、沖縄はまだ「みるく世」(平和な世)ではなかった。米軍の本土進攻を遅らせるために、生き残りの将兵たちには、遊撃戦による徹底抗戦が命じられていた。このような戦略持久の作戦を推進したのは、軍参謀長の長勇中将で、糟屋郡粕屋町の農家に生まれた人である。
 沖縄失陥後、日本は継戦能力をなくしたまま、敗戦への道を辿ってゆく。本土決戦による一億総特攻総玉砕以外の戦略上の選択肢はもはやなかった。天皇の聖断のない限り、どこまでも沖縄戦を本土で戦い続けただろう。しかし無条件降伏を受け入れ、アメリカを中心とする連合国軍による占領に抵抗することなく、日本は「みるく世」のために再出発した。平和憲法を携えて国際社会に再登場したが、はたしてそうだろうかと火野葦平資料館館長の坂口博(敬称略、以下同断)は問いかける。占領期にアメリカによる太平洋戦争史観を強要され、日本の戦争は歪められたのではないかと「戦争の福岡」(講演録)で指摘し、大東亜戦争史観に立たなければ、本当の日本の戦争は見えてこないのではないかと問題提起した。(後略)(師岡氏)


【著者紹介】 福岡地方史研究会

福岡地方史研究会は、1962年の発足。研究テーマは地方史に限らず広く文化史・社会史・民俗学に及び、対象となる時代も原始・古代・中世・近世・近現代と各時代の研究者が所属。『福岡藩朝鮮通信使記録』が2001年2月福岡県文化賞を受賞。月1回定例研究会開催、年1冊会報(本誌)を発行する。
*福岡県立図書館の研修室で毎月1回の定例研究会(卓話発表)を開いています。学界と在野の交流によって,また会員相互の研鑽によって地方史研究の発展・深化を図ることを目的としています。どなたでもご参加いただけます。地方史研究に興味を持ち、研究を進める上で指針を得たい、史料の所在について情報を得たいという方、定例研究会その他に参加して継続して話を聞きたい方は、どなたでもふるってご参加ください。問合せは花乱社まで(092-781-7555)

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