図書出版

花乱社

『知のアトラス:宇宙をめぐる教会と科学の歴史
〈西南学院大学博物館研究叢書〉』

■西南学院大学博物館発行
■森 結 編
■本体1000円+税/B5判変型/72ページ /小口折並製本/オールカラー図録
■ISBN978-4-910038-99-5 C0640
■2024.10刊
■西南学院大学博物館研究叢書→こちら

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天動説から地動説への宇宙像の転換,
それはヨーロッパ人が信奉してきた世界を,
大きく揺るがすものであった。

アリストテレスの天動説は,聖書釈義と結びつき教会によって支持されたが,天体観測に基づき疑義が呈されるようになる。教会は地動説学者の書を禁書とし宗教裁判を行うが,実は徹底的に排斥したわけではなかった。むしろ神学において自然は『聖書』と同じく,神の啓示を記した書物とみなす伝統が存在しており,自然学的研究を行う聖職者も存在したのである──。
本図録では,古代・中世の宇宙像,天動説から地動説への転換,世界図の誕生,また身体という小宇宙をめぐって,キリスト教世界においてどのように探究が行われてきたのか,「アトラス(地図,星図,解剖図を含む図版集)」を紹介し歴史を展観する。
【2024年度西南学院大学博物館特別展オールカラー図録】



ご挨拶

 2006(平成18)年の開館以来,西南学院大学博物館は,本学の建学の精神であるキリスト教主義に基づき,キリスト教文化に関する資料を収集し,その調査研究の成果を,展示活動を通して発信してきました。今回は,去る2023(令和5)年に欧州だけでなく本邦をも賑わせていた,地動説を提唱したポーランドの学者ニコラウス・コペルニクス(Nicolaus Copernicus,1473−1543)の生誕550周年を契機として,「知のアトラス─宇宙をめぐる教会と科学の歴史」を開催いたします。
 ながらく信じられてきた天動説から,地動説へのパラダイムシフトの裏には,教会から迫害された科学者たちの,勇壮な戦いがあったことを連想される方も多いと思います。それではなぜ,教会は天動説を宇宙論の公式見解としていたのでしょうか。教会と科学とは相対するものだったのでしょうか? 多くのキリスト教資料を有する博物館として,本展覧会では,キリスト教の歴史から見た教会と科学の関係について,展観いたします。
 純粋な知的活動が多くの障壁を乗り越え,現代に継承されています。これは,決して遠い過去のことではありません。大学や博物館などの研究機関においても昨今は,制度的に学術の比重が軽視されつつあります。本展覧会は,そのような困難な状況でも,知的な営みを次世代に継承しようとする人々に敬意を表するものです。
 最後になりましたが,本展覧会の開催および本書の作成にあたって,ご協力を賜りました関係各位に厚く御礼を申し上げます。
  2024年10月21日

                                     西南学院大学博物館館長 片山隆裕


もくじ

ご挨拶[西南学院大学博物館館長 片山隆裕]
 開催概要/凡例

[T]宇宙の中心としての地球
 T 古代の宇宙像
 U 宇宙と人体の照応:天文学と占星術のあわい
  【コラム】中世の宇宙像における風の表象[沖縄県立芸術大学美術工学部教授 尾形希和子]
 V 中世の宇宙像とダンテ『神曲』
  【コラム】ダンテの地獄・煉獄・天国の絵画化[学習院大学文学部教授 京谷啓徳]

[U]地球は動く──教会と科学
 T 天動説から地動説へ
  【コラム】地動説と教会[西南学院大学博物館助教・学芸員 森 結]
 U 世界図の刷新
  【コラム】 コスモグラフィア革命とアトラス(地図集)の誕生
       [西南学院大学博物館助教・学芸員 森 結]
 V イエズス会士の科学活動
  【コラム】イエズス会士とガリレオ[西南学院大学博物館助教・学芸員 森 結]
  【コラム】 江戸の天文学ことはじめ[西南学院大学博物館学芸研究員 鬼束芽依]

[V]身体という小宇宙
 T 人体の観察
  【コラム】 イエズス会士アタナシウス・キルヒャーにおける宗教と科学
       [西南学院大学博物館助教・学芸員 森 結]
 U 身体の中心としての心臓
【論考】獣帯人間と仲間たち 天体と身体の照応についての覚書[町田市立国際版画美術館学芸員 藤村拓也]

 主要参考文献/出品目録




■本文見本

 

 


 

 

 

 







【編者紹介】森 結(もり・ゆい)

九州大学大学院後期博士課程修了。博士(文学)。北九州市立大学,福岡市博物館,福岡県文化振興課等での非常勤を経て,現在,西南学院大学博物館助教・学芸員。専門は西洋美術史。
主な業績に「オルヴィエート大聖堂サン・ブリツィオ礼拝堂装飾の制作背景─腰壁装飾に見られるピントゥリッキオ工房との関連から」(第26回鹿島美術財団賞/『鹿島美術研究』35号,2018年),「オルヴィエート大聖堂サン・ブリツィオ礼拝堂装飾事業1447−1504―ピッコローミニ家とモナルデスキ家の市政と事業への関与をめぐる政治的背景―」(第20回『美術史』論文賞/『美術史』第189冊,2020年)などがある。