図書出版

花乱社

『創られたキリシタン像〈イメージ〉:排耶書・実録・虚構系資料
〈西南学院大学博物館研究叢書〉』

■西南学院大学博物館発行
■鬼束芽依編
■本体1000円+税/B5判変型/64ページ /小口折並製本/オールカラー図録
■ISBN978-4-910038-96-4 C0016
■2024.8刊
■西南学院大学博物館研究叢書→こちら

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キリスト教伝来以降、民衆が抱くキリシタンへのイメージは、排除を意図して書かれた「排耶書」や「キリシタン実録」(実際の事件を主題にした小説の一種)など様々な出版物によって、実態とはかけ離れたものとなっていった。
大正期になると一転して「キリシタンブーム」がおこり、「虚構系資料」(キリシタン遺物の偽造品)を扱う骨董商まで現れ、現在誤認されたままの資料が各地のミュージアムに収蔵・展示され文化財に指定されるなどの問題が生じている。
これら三種の資料を紹介し、近世初期から現代までの民衆のなかのキリシタンイメージの変遷と、歴史的背景を読みとく。
【2024年度西南学院大学博物館企画展Uオールカラー図録】



ご挨拶

 西南学院大学博物館は,キリスト教主義の学院教育活動方針に基づき,キリスト教文化に焦点をあてた活発な博物館活動をおこなっています。今回は,日本におけるキリスト教の歴史の中でも,大衆から見た「キリスト教・キリスト教徒」という「他者」へのイメージをテーマとして,展覧会を構成しました。2021年度に開催した企画展「創られたキリシタン像―排耶書と実録のなかのキリシタン―」を増補・拡大したものです。
 キリスト教信者は,日本の歴史の中で禁教の弾圧を受け,信教の自由が許されて以降も偏見や差別の対象となってきました。本展示で取り扱う「排耶書」や「実録」などの作品は,そのような偏見を助長するものとしてつくられ,利用されてきました。
 本展覧会では,これまで当館でも扱ってこなかった「虚構系資料」も多く出品されています。「虚構系資料」には,キリスト教の表現に対する安易な解釈や偏見も多く見受けられます。まずはそれらの資料について,多くの方に知っていただければ幸いです。そしてキリスト教文化を発信する博物館として,本展覧会をもって,これまでの反省とこれからの問題提起としたいと思います。
 最後になりましたが,本展覧会の開催および本書の作成にあたって,ご協力を賜りました関係各位に厚く御礼を申し上げます。
  2024年8月23日

                                     西南学院大学博物館館長 片山隆裕


もくじ

ご挨拶[西南学院大学博物館館長 片山隆裕]

T 排耶書:「耶蘇」の排斥
 江戸時代初期の排耶書
 島原・天草一揆の影響
 排耶書の変化
【コラム】『吉利支丹物語』に記された「邪教」感        [順天堂大学スポーツ健康科学部准教授 杉山和也]

U キリシタン実録:キリシタンイメージの定着
 キリシタン実録とその内容
【コラム】キリシタンの幻術の表と裏:『切支丹宗門来朝実記』から   [立教大学名誉教授 小峯和明]
【コラム】江戸後期の「切支丹」摘発事件               [西南学院大学博物館学芸調査員 前田桃花]
 江戸時代末・明治時代の排耶運動
 仏僧による排耶論

V 虚構系資料:「発見」されたキリシタン遺物たち
 「嘉永以前西洋輸入品及参考品」に出品された「耶蘇教遺物」
 キリシタン遺物の新発見
 キリシタンブームと虚構系資料の登場
 十字文様
 在来の神仏像・仏具の改変
 「マリア観音」をめぐる問題
 踏絵の偽造品
 南蛮鐔(キリシタン鐔)
 お土産品/近現代の信仰具
【コラム】虚構系かくれキリシタン信仰資料の問題          [平戸市生月町博物館・島の館館長 中園成生]
【コラム】虚構系資料の展示について                 [西南学院大学博物館学芸研究員 鬼束芽依]
 魔鏡の復元/おわりに─「創られたキリシタン像」が語るもの
 Abstract/出品目録/主要参考文献

【論 考】
キリシタン研究の発展とキリシタン資料・遺物の「発見」史       [同志社大学神学部准教授 三輪地塩]
筑前山家宿の「キリシタン伝説」と吉原勝               [西南学院大学国際文化学部教授 伊藤慎二]
南島原市深江町のいわゆる「かくれキリシタン」墓標についての検討   [西南学院大学博物館学芸調査員 馬場紀聡]
西南学院大学博物館蔵「魔鏡」は「かくれキリシタン資料」といえるのか?[西南学院大学博物館学芸研究員 鬼束芽依]



■本文見本

 

 


 

 

 

 







【編者紹介】鬼束芽依(おにつか・めい)

1996年生まれ。西南学院大学大学院国際文化研究科国際文化専攻博士前期課程修了。大野城心のふるさと館学芸員を経て,現在,西南学院大学博物館学芸研究員。専門は日本考古学(近世)。特に,近世日本社会における日蘭交流,異文化受容について。
編著として,『考古学からみた筑前・筑後のキリシタン─掘り出された祈り』(花乱社,2023年),『シーボルトと近世の蘭学者たち─前野良沢から伊藤圭介まで』(同,2023年),主な研究論文として,「考古学の先駆者としての吉田雀巣庵─『尾張名古屋博物会目録』を通して」(『西南学院大学博物館研究紀要』第8号,2020年),「近世日本社会におけるフラスコ形ワインボトル流通状況についての再検討」(『西南学院大学博物館研究紀要』第11号,2023年),「コンプラ瓶の成立過程についての一考察―フラスコ形ワインボトルとコンプラ瓶の比較研究を通して―」(『江戸遺跡研究』第10号,2023年)などがある。