図書出版

花乱社

『在日。:「複眼思考」で生きる』朴 仙容 著

■本体1500円+税/四六判/188頁/並製
■ISBN978-4-910038-63-6 C0095
■2022.10刊

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悩める在日三世の君へ。
四世、五世へとつなぐために、
君たちの拠って立つところを、
私と私の家族のことを通して記しておきたい。

*『東洋経済日報』のエッセイ欄(2013〜22年)寄稿60篇ほか
 「在日三世の必読書」等収録
*跋文:「日韓」における不偏不党と普遍性を求める朴仙容さん」
 北海商科大学教授・国際交流センター長 水野俊平氏




目次

はじめに:「在日」取扱説明書

■第1章 我が七十五年の人生を振り返る
 「反日思想」は、独立運動とは全く異質なものだ/僕の生育史/十九歳の夏、祖国との出会い/
 僕の履歴、帰属心は日韓のどちらに?/ソウルで青年娯楽情報誌創刊の経緯/「在日」の微妙な立ち位置/
 韓服に下駄履き/東アジア全土を視野にした出版計画/韓国版『プレイボーイ』誌の誕生/発行人孫牧人先生

■第2章 「在日」についての、我が思い
 在日韓国人義勇軍/在日力について/「在日」の強みを生かすプラス思考/絆を深める「在日」の系譜/
 日韓関係悪化よりも「在日」史/『金石範評論集』/「在日」のブレイクスルー

■第3章 我が家族への強い思い
 在日企業の社会貢献/三世代通史の「在日物語」/僕の家族/自慢のアボジ/
 苦しい時の神頼み/日韓夫婦の子どもたち/アボジの背中/日韓は仲良く、今ではそれが「在日」の願いである

■第4章 我思う、故に我あり
 本国小旅行/どっちの味方だ?/ロッテお家騒動の波紋/戦後五十年史映像『在日』/日韓相互理解のために/
 旧朝鮮銀行/在日コリアンを誇りたい/「在日」のプラス思考/良い韓国人も悪い韓国人も皆殺せ!/
 「在日」話あれこれ/東京五輪・「在日」選手団を夢想 /日韓会談/敗戦日/反対給付/
 ある在日韓国人牧師の生涯/からいはうまい/やはり在日コリアンは複雑だ

■第5章 我が想い、未来に
 甘川文化村/共演、サムルノリと和太鼓/卑怯の戒めが教育の真髄/十字架のある風景/北九州韓国会館/
 夢のあとさき/和韓融合食品/アジア音楽活動集団「アジ縁」/アジア共同体/選挙の争点/新移民政策/
 『帝国日本の植民地を歩く』/人災も危険水域。政治家の劣化/日本人の忘れもの/福岡市が国家戦略特区部長を公募/
 フィールドワーク研究会/それでも中国に住む理由/老人力、侮るなかれ

■寄稿:あなたにとって「在日」とは、どのような存在でしょうか?
 小学校時代に一緒に遊んだガキ大将・大水君との苦い思い出[板井一訓]
 在日朝鮮人集落とともに生きる[河原敏男]
 元夫は在日三世。在日のイメージは、元夫の性格とダブって短気で、愚痴っぽい[匿名]
 在日問題を切羽詰まった問題としないままにしてきたのは、見た目がほぼ一緒というのも影響[鵜澤和宏]
■在日三世の必読書
■我が家の「在日」の始まり
■跋文「日韓」における不偏不党と普遍性を求める朴仙容さん[水野俊平]

あとがき


本文より

「第3章 我が家族への強い思い」
「日韓は仲良く、今ではそれが「在日」の願いである」より抜粋

 今は在日三世の時代。四世や五世になると、日本国籍を持つ者が殆どだ。韓国籍の在日も意識は日本人と変わらない。それでも日韓の諍いは彼らの胸にも重く圧し掛かる。どちら側にも立てなく、中立とも言い難い。日本側や韓国側に、あっちにいったり、こっちにいったりしている。媚びているのじゃない。両国人の思いが分かるのだ。両国は仲良くしてほしい。それが今の在日の願いである。油断していると、両国人の口からとんでもない暴言が飛び出す。両国人ともに、微妙な立場の在日に対する配慮はない。
 「いい加減にしろ! 日本人・韓国人」と怒鳴りたくなる。


  * * *


「あとがき」より抜粋

 在韓時代の一九九七年に『親韓親日派宣言』(亜紀書房)を上梓した。一九八〇年代の後半に渡韓し、ソウル生活で在日が故に浴びた不愉快な体験を綴った。今読み返すと、僕の本国理解不足からの無責任な放言がかなりあるが、日韓関係は今も全然変わっていないのが読み取れる。
 韓国では「日の丸」が足蹴にされ、日本では民族学校の女学生の「チマ(スカート)」が切り裂かれる。両国のマスコミが摩擦を増幅させる。だから日本人は、韓国人が全員で「日の丸」を燃やしていると思うし、韓国人にしても、日本人が鋏を持ってチマを着た女性を追いかけ回していると思うことになる。
 両国の不仲で僕の心は休まることがなかった。五十歳でソウル生活を終え、日本に戻ってからは家族を守ることだけに専念した。そしてそれも、還暦前に解放されて自由を得、年金生活者となって古稀も過ぎた。五十歳からの二十五年間、また新たな体験を重ねた。物欲が薄らぎ、「あるがままに生きればいい」と気づくまで、かなりの時間を要した。
 少年期の我が家は経済的に不自由のない生活だった。不足感はなく、唯一の不満が「韓国人である」ことだった。そんな僕が十九歳で「韓国人」を自覚、祖国を誇れるようになった。祖国が精神的な支柱となる。祖国の存在は大きかった。その思いが本国での起業に繋がった。僅か十年で挫折したが、その間、頻繁に日韓を行き来し、「複眼思考」を身に着けた。在日の独特な視点である。




【著者紹介】朴 仙容(パク・ソンヨン)

1947年,北九州市生まれ,在日韓国人二世。拓殖大学卒業。2000年,韓国食品普及処「株式会社海龍」創業。現在,相談役。日韓融合食品研究室室長。著書に『親韓親日派宣言』(亜紀書房,1997年),編訳に『兄弟の江』(李憙雨著,竹書房,2009年)。在日問題研究会主宰。