『ゴルゴダの火:龍を見た男たちの地熱開発の物語』白木正四郎著
■本体1800円+税/四六判/504頁/上製
■ISBN978-4-905327-66-0 C0093
2016年秋,日本でサミットを狙った国際テロが発生した。標的は原発。
日本はあの時,なぜ地熱に舵を切らなかったのか──。日本のエネルギーの救世主である地熱発電を殺したのは誰か。
世界を震撼させた福島原発事故を経て,なぜ,なおも原発を選ぶのか。
阿蘇カルデラの地熱開発に挑む男たちの物語『龍の塔』(1988年刊)から30年。相次ぐ国際テロ,大規模自然災害,大きく変化する世界情勢を踏まえ,大幅加筆し再編実際に地熱開発に携わった著者による,現在起こりつつある「エネルギー問題」に挑んだ渾身の近未来小説。
【目次】
プロローグ
第1章 原発テロの脅威
第2章 邂 逅
第3章 胎 動
第4章 レベッカ
第5章 サンベルト
第6章 ミスティ
第7章 谷 神
第8章 祖母伝説
第9章 龍伝説
第10章 白 龍
第11章 天と地をつなぐもの
第12章 マチルダ
第13章 掘削レース
筆14章 静 寂
第15章 負けるが勝ち
第16章 神業への挑戦
第17章 地母神ガイア
第18章 道を照らす人
第19章 フィリピンの嵐
第20章 慟 哭
第21章 フィリピン維新
第22章 ゴルゴダの火
第23章 金継ぎ
第24章 ドローンの秘密
第25章 スズメ蜂の陰謀
エピローグ
補章1 未来の子供たちへ
補章2 ぜひ読んでいただきたい本
参考資料 1 鎌倉ユネスコ協会での講演資料(二〇一二年二月十四日、鎌倉にて)
参考資料 2 九州の電力供給へ緊急基本計画提言「二一世紀の新しいエネルギー供給について」(二〇一二年に作成した私案)
参考資料 3 「脱・炭素社会 ガスタービンに春到来の予感」(「日本経済新聞」)
参考資料 4 中部電力の愛知県にある知多火力発電所
おわりに
【本書「おわりに」より抜粋】
福島原発事故後、日本で唯一再稼働した原発は鹿児島県の川内原発のみである。自然エネルギーにあふれる九州の原発のみが再稼働されるのか? そして二〇一六年、川内原発に隣接する熊本県で熊本・大分大地震が起こった。再稼働した原発をテロだけでない火山爆発や大地震が九州を襲う危機が来ている。(略)
なぜ、日本のマグマが殺されたのか?
今まで三十年間書けなかった日本の地熱業界の闇を書くことができた。大きな闇の力には到底敵わないと思うが、一人が二人、二人が三人と増えていけば、日本も変わる可能性があるかもしれない。
(略)戦争は石油の奪い合いで始まる。国の安全のためには、なるべく自国の再生可能なエネルギーを確保することである。高度の発電効率技術や公害防止技術を駆使した新しい発電所を建設し、そしてエネルギーの不足分は、世界中に眠る豊富な石炭やシェールガスなどを輸入する。一神教同士の果てしない争いの連鎖が続く中東に頼らず、複数の国から安く購入できるエネルギー政策を構築することである。
今ならまだ九州の原発をゼロにすることができる。
いつかイエスが復活したように、地熱の炎が同じように復活すると信じている。
【著者紹介】白木正四郎(しらき・まさしろう)
1948年,福岡市親不孝通りにて誕生。早稲田大学理工学部資源工学科卒業。出光地熱開発(株)技師長として滝上地熱開発事業に従事。サイバー大学「老荘思想と新自由人論」客員教授。元九州大学地熱掘削講座非常勤講師。RKBテレビ「Gな気分」,「ワイド5」,「探検九州」などの元テレビキャスター。著書に『龍の塔』(葦書房,1988年),『親不孝通り夢日記』(エピ出版,1995年),『ミッテラン・コード─パリに隠されたミッテラン大統領の秘密の暗号』(海鳥社,2008年),親不孝ムービー脚本に『シティ・オブ・ドラゴン』などがある。福岡市在住。