『カメスケのかわいい水辺の生き物2』文 亀井裕介/絵 田渕周平/監修 田中克
■やながわ有明海水族館発行
■本体1500円+税/A5判変型/96頁/小口折り並製本/オールカラー
■ISBN978-4-910038-95-7 C0645
■2024.7刊
■『カメスケのかわいい水辺の生き物1』はこちらへ
目次
はじめに
やながわ有明海水族館について
水先案内人紹介/この本の読み方とカテゴリーバーの見方/生育環境・魚道
T 水辺の生き物たち
汽水・海水魚
甲殻類・その他
貝類・鳥類
U 読み物
ワケノシンノスを食べてみた
“豊饒の海”有明海:小さな水族館と泥の海[亀井祐介]
有明海だけに生き残っている生き物たち[佐藤正典]
内水面の遊漁のルール
くもで網漁
カメスケのおすすめ水族館
おわりに
索 引
「はじめに」より
■未知なる“推し”を探せ!!
みなさんこんにちは! やながわ有明海水族館で3年間館長をしていました亀井裕介です。現在は名誉館長になりました。好評につきということで、絵図鑑の第2弾を出版することができました! とても嬉しく思います。応援いただいた皆様、本当にありがとうございます。
さて、前回の絵図鑑と異なり、今回は有明海の干潟にテーマを絞って種類を選びました。有明海は“泥干潟の海”で、日本の干潟の40%が有明海にあると言われています。時には地平線が見えるほどの広大な干潟が広がる海です。そんな有明海にはかつて海水面が今より100m以上低い時代に大陸から渡ってきて、今や日本には有明海にしか生息していない“大陸遺存種”と呼ばれる一風変わった生き物たちも暮らしています。干潟を飛び跳ねるムツゴロウや、エイリアンのような見た目のワラスボなど、個性的で魅力的な生き物たちだらけです! 他にも、干潟という海と“スキマ”の環境にはとても多くのユニークな生き物が暮らしています。ナマコに寄生する巻貝、生きた巻貝の殻で生活するイソギンチャク、1mmくらいの巻貝などなど、そんな見ていて楽しくなる干潟の生き物は残念ながらあまり注目されていません。
今回の本はそんな生き物たちを中心に、有明海や干潟の生き物の魅力が伝わるように頑張って描きました。この本を読んでみなさんなりの“推し”を見つけていただいたら嬉しいです。
[やながわ有明海水族館名誉館長 亀井裕介]
■若者たちが自らと有明海の生き物を育む場に
やながわ有明海水族館は、故近藤潤三さん(元筑後中部魚市場長)のご遺志を受け継いで2016年秋にリニューアルオープンしました。そこに至る最初のきっかけは、2010年10月に柳川で開催した第1回有明海再生シンポジウムでした。当初は、有明海の再生方向について意見が異なりましたが、ずっと私たち(水族館を下支えするNPO法人SPERA森里海)の行動を見守って下さった近藤さんが、最後には、「有明海の再生を託せるのはあんた達だけだ。若者が中心になって活用してくれるなら、施設をお貸しする」と明言され、引き継ぐことになりました。水族館の名前に「有明海」をつけたのにはこのような背景があります。
この水族館は、水槽に有明海や掘割の生き物を展示して皆さんに見ていただくだけでなく、それにかかわる小学生から新進の大学生まで、若い世代が刺激し合いながら、自らを育む貴重な場にもなっていると思われます。
その若者の代表としての前館長亀井裕介君が主役となり、ユニークな 「カメスケのかわいい水辺の生き物」が企画され、ここにその2が誕生することになりました。有明海の水辺に生きるユニークで貴重な生き物たちの紹介です。有明海の再生は簡単なことではありませんが、身近な水辺の生き物への関心から始まると思います。有明海は、“宝の海”とまで呼ばれ、日本ではこの海にしか生息しない貴重な生き物が人知れず命をつないでいます。絶滅危惧種をこのままにしては、私たちも絶滅の道を歩むことになります。本書が、有明海の身近な水辺と生き物への関心を高めてくれることを願っています。
[京都大学名誉教授 田中 克]
【文】亀井 裕介(カメイ・ユウスケ)
2004年、福岡市生まれ。2021年4月に「やながわ有明海水族館」館長就任。2024年3月末で館長を退任し、4月から名誉館長となる。現在、佐賀大学農学部の2年生(2024年6月現在)。日本テレビ「超無敵クラス・高校生から館長に密着」でテレビ出演中。佐賀新聞・有明新報に生き物のコラム掲載中。
【絵】田渕 周平 (タブチ ・シュウヘイ)
1975年、東京都生まれ。コロラド州立大学中退。Tシャツのデザインが得意なTシャツマン。2002年から18年間、BEAMS BOYのTシャツを制作。2020年に「忌野清志郎×田渕周平×ビームス」カプセルコレクションを発売。ヲタクとまではいかないが生き物好きで、ショウモントカゲモドキとアカヒレ8匹とドジョウ3匹と一緒に暮らしている。
【監修】田中 克 (タナカ ・マサル)
京都大学名誉教授。森から海までの多様なつながりとその再生をめざす統合学「森里海連環学」を創設。国民的社会運動「森は海の恋人」との恊働により、“瀕死の海”有明海や“震災の海”三陸沿岸の水際再生に、海と生きる日本の未来を見据える。シーカヤックにより漁村を巡る「海遍路」に関わる。著書に『森里海連環による有明海再生への道』(監修、花乱社・2014)、『いのちのふるさと海と生きる』(編集、花乱社・2017)、『いのち輝く有明海を──分断・対立を超えて恊働の未来選択へ』(編集、花乱社・2019)、『いのちの循環 「森里海」の現場から──未来世代へのメッセージ72』(監修、花乱社・2022)ほか多数。