書評『中国D級グルメの旅』
●「朝日新聞」2019.11.6
考古学者の高倉洋彰・西南学院大学名誉教授(76)が、これまでに訪ねた中国の各地で食べた料理にまつわる思い出をつづった本、「中国D級グルメの旅」(花乱社)を刊行した。
「D」とは「デラックス」の頭文字。「現地の人が食べているものを求めて、普通の旅行では出合えない食を体験してきたことは、豪華さとは別の『デラックス』だと思います」
特に関心を持ったのは麺類。「福岡の豚骨ラーメンのルーツが知りたかった」という。中国各地で見るのは、あっさりした関東風のラーメンに似た麺ばかり。だがついに、寧波(ニンポー)で牛骨スープながら豚骨ラーメンとそっくりの麺に出合った。「これこそルーツだ、と興奮して店主に聞くと、『福岡で働いたことがあり、そこで食べたラーメンをまねた』と。結局、豚骨ラーメンは日本発祥のようです」
2017年春に大病を患い、1カ月ほど入院した。その際に中国での食体験を記録してきた膨大なメモを整理し、原稿にまとめていた。それが編集者の耳に入り、出版が決まった。
「中国でもフレンチやイタリアン、韓国料理が普及し、食文化は変わりつつある。軽い気持ちで書いた本ですが、いつか貴重な記録になるかもしれません」(今井邦彦)