書評『ぼく色のレインボー』
●2016年4月14日「西日本新聞」
多彩な題材 独特の躍動感
作品集はA4判変型横綴じのカラー刷り、64ページ。作品の題材は外国の寺院や宮殿、風神雷神、天使、歴史上の人物、動物、花など多彩。楽器演奏やダンスが好きな性格を反映して楽器を描いた作品も多い。自身の一番のお気に入りは、表紙を飾る「ビック・ベン」だ。
将貴さんは生後すぐダウン症の診断を受けた。心臓に約2センチの穴が開くなど症状は重く、医師から「3歳になっても歩けない」と告げられたという。母和恵さん(62)はさまざまな療育を懸命にほどこし、1歳半で歩けるまでに成長した。手首の力をつけさせようといつも紙と筆記用具をそばに置いていたところ、やがて暇さえあれば夢中で絵を描くようになった。
特別支援学校高等学部1年の夏、NPO法人「コミュニケーション・アート」(大野城市)の松沢佐和子理事長(57) が主宰する造形教室に通い始め、学校卒業後は通所する生涯福祉サービス事業所でも絵を描いている。約1年前から「僕は画家」「絵を仕事として頑張る」と自ら語るようになり、作品集出版につながったという。
出版記念展では31点を展示。松沢理事長は将貴さんの絵について「独特のリズム感や躍動感がある。ユーモアあふれる人物や動物たちの表情もどこか本人に似て愛に満ちあふれている」と評する。
将貴さんは「作品集ができてうれしい。出来は良いです」とにっこり。和恵さんは「周囲の方々に支えらえれてきたことをあらためて痛感した。絵と出合えて本当に良かった」と話した。