書評『ヒマラヤ巡礼:神々の座と秘境に生きる民』
●『山と渓谷』2018.4
少年時代から夢見てきたヒマラヤへ、還暦を過ぎて本格的に通い始めた著者。ずっしりと重い200余ページの写真集に、12年間、計450日に及ぶ撮影山行の思いが詰まる。崇高な峰々はもちろん、自らの子ども時代に思いを重ねる素朴でたくましい人々の生活、純粋な信仰心など、さまざまな角度からヒマラヤの自然、文化を捉えた。
●「西日本新聞」書評 2018.2.4
「英国隊、エベレスト初登頂なるか?」ー。少年時代、配達していた新聞の見出しに胸をときめかせた。それから50年。三菱重工業長崎造船所を定年退職した著者は、あこがれのヒマラヤに向かった。現地に滞在した日数は72歳までで延べ450日。ヒマラヤ山脈のほぼ全域を巡り、踏破距離は2700キロに及ぶ。
最初はエベレストやマナスルなど名峰を撮影する旅だったが、〈だんだんと秘境の民族と生活に惹かれるようになった〉。写真は、ネパール最奥部、ドルポ郡で暮らす家族。昼休み、お茶が入るのを待っているのだろう。厳しい自然の中、力を合わせて生きる人々の姿に、著者は〈人間の幸せの原点を見る思い〉がしたと記す。
●「東京新聞」アートな本 2018.1.28
長年のあこがれだったヒマラヤへ六十一歳から向かい始めた元造船マンが、十二年かけて撮り続けた二千七百キロに及ぶ山旅の記録。エベレスト、カンチェンジュンガといった世界最高峰の荘厳な山容だけでなく、麓の厳しい環境の中で、たくましく生きる多数の民族の暮らしに密着し、魅力的な表情の数々を切り取った。