書評『帰る旅─空想の森へ:地域アートの試みの中で』
●「西日本新聞」読書欄 2018.8.18
九州の民俗仮面のコレクションで知られる大分県由布市の私設美術館「由布院空想の森美術館」が今年5月、再オープンした。経営不振による2001年の閉鎖以来、17年ぶりの再出発。同館の監修者が、自らの歩みをつづった。石切り場で働きながら絵を描き、詩を書いていた青春時代、湯布院でのまちづくり、美術館の開館と挫折、島原や宮崎などで手掛けたアートイベント…。地域の文化資源を発掘し、アートとして活用してきたこれらの活動を、本人は「アーティストとしての表現活動の継続」と位置づけている。
●「西日本新聞」関連記事 2018.5.20
空想の森美術館 湯布院に再び─17年ぶり 仮面など100点展示
大分県の旧湯布院町(現由布市)の町づくりをけん引したものの、経営難で2001年に閉館した私立美術館「空想の森美術館」が20日、17日ぶりに同市湯布院町川北平原で再開する。館内には監修する高見乾司さん(69)が九州やアジアで集めた仮面など100点近くを展示。高見さんは「再び湯布院で美術館を運営でき、うれしい」と感慨を深めている。
同美術館は、旧湯布院町で町づくり活動に取り組んでいた高見さんが1986年に開館した。周辺の森に溶け込み、文化、芸術の発信拠点として親しまれたが、01年に閉館した。
高見さんはその後、宮崎県西都市や大分県日田市で美術館運営に携わり、昨年秋に空想の森美術館の再開を決意。知人から土地を借り、解体予定だった築150年以上の古民家を移築し、美術館とした。メインは高見さんが国内外で収集した神楽や祭事用などの仮面で、古くは南北朝時代の面もある。高見さんは「造形、神秘性、歴史…。仮面のいろんな魅力を知ってほしい」と話している。入館料500円(中学生以下無料)。大分自動車道湯布院インターチェンジから車で約3分。(岩谷瞬)