図書出版

花乱社

 書評『観世音寺の歴史と文化財 府大寺から観音信仰の寺へ』

●2015年11月22日「西日本新聞」読書欄

 観世音寺は 福岡県太宰府市にある天台宗の寺院である。九州を代表する古寺で、創建は7世紀後半。天智天皇の発願により造営され、奈良の東大寺、栃木の下野薬師寺とともに「天下三戒壇」の一つに数えられている。

 本書は、この観世音寺の住職で、日本考古学協会会長(西南学院大名誉教授)を務めている筆者(研究者としての筆名は高倉洋彰氏)が、この寺の1300年にわたる歴史と文化財について、直近の研究成果を踏まえて書いた観世音寺の最新概説書ともいうべきコンパクトな一冊だ。

 寺の創建や伽藍配置、経済的基盤、律令制衰退後の観音信仰寺院への変化などの通史を克明にたどる一方、国宝の梵鐘、重要文化財の木造不空羂索(ふくうけんさく)観音立像、木造馬頭観音立像などの文化財についてもオールカラーの紙面で丁寧に解説している。