書評『医者も知りたい 面白医学英語事典』
●「出版ニュース」2017.9月中旬号
木村専太郎著『医者も知りたい面白いが区英語事典』は、愉しい寄り道話もたっぷりのユニークな医学用語事典である。
1938年生まれ、今年79歳の著者と英語の関わりは長くて濃い。小学校4年生から英語を習い、医学生の時は英語の医学書に親しんだ。 1965年、外科臨床研修のため渡米、以後15年間に3度渡米して12年間滞在し、プライマリーケア学、救急医学を学んだ。77年にアメリカ外科専門医試験に合格し、アイオワ州で3年開業しながら週2、3回はERの夜間勤務についた。81年に帰国後は大分県や福岡市の病院長を努めた。2001年、福岡市に「病と健康のよろず相談所・木村専太郎クリニック」を開き今に至る。
この間の1984年から2010年にかけ、九州大学医学部同窓会誌『学士鍋』に「医学英語落書ノート」というタイトルで連載した。本書は足掛け27年、106回に及んだ連載をまとめたもの。医学英語は『ドーランド医学英語辞典』収録のもので、そこからよく使われる約1500語をとりあげ、発音を示し、やさしい解説を加え、関連した事項やさまざまなエピソードを紹介。12年間に及ぶ米国滞在経験 、その後の臨床医学者としての実績、そして幅広い教養が盛り込まれた労作である。
西洋、日本の医学史に関心を持つ著者は、ネット時代前はそれらの文献を求めて、地元はもとより東京、大阪の古書店めぐりを大いに行ったという。
医学英語を少し拾ってみると。bed-saide(ベッド・サイド)ー枕元のこと。医師と看護士には厳然とした、患者とその家族に対するbed-side manner(ベッドサイド・マナー)がある。私の外科研修医の時のチーフは厳しく、医師の身なり、言葉遣い、エチケットをよくしつけられたようだ。無精髭、汚い白衣、どた靴、患者の前でガムを噛むことなどは厳禁であった。ーまた医学教育にとってbed-side teachingは重要で、教育回診の日米の差にも言及。
DECEASE(ディスィース)名詞と動詞で「死」と「死亡する」の意味を有する。病気の意味のdisease(ディズィーズ) と発音を間違えないように!間違えるとー
手術を意味するおぺらちおん(オパレィション)ではラテン語の語源、さらに音楽の作品番号Op.、opera(オペラ)まで話が及ぶ。
CUFF(カフ)では1963年、東京立川の米軍病院のインターンだったころの笑えないエピソードも披露。
三浦梅園、救命士、文献探し、右脳型と左脳型、LとRのこと、体温計の歴史など20余篇のコラムにも蘊蓄を傾ける。
●「西日本新聞」2017.9.21
楽しく読める医学英語事典 南区の木村医師出版 経験談交え1500語
医学英語や日常英語など1500語をまとめた「医者も知りたい面白医学英語事典」を福岡市南区の木村専太郎さん(79)が今夏に出版した、「日常会話で使う英語にエピソードを交えて紹介しており、医療従事者だけでなく一般の人にもためになる本になっている」という。
木村さんは九大医学部卒業後、東京都立川市の米空軍立川病院でインターンなどを経験して1965年に渡米。国立病院などで外科研修を受けたあと、日本に帰国するも再び渡米し、アイオワ州で医師免許を取得。(略)米国滞在期間は通算12年。帰国後は大分県日田市の日田中央病院院長や那珂川病院院長などを歴任。2001年に現クリニックを開業した。
84年から10年にわたり、九大医学部同窓会誌「学士鍋」に「医学英語落書ノート」 を106回連載した。この連載が好評で、OBらから出版を望む声が上がり、出版することになった。
事典では、英単語とギリシャ神話との関連性や自身のエピソードも交えて紹介。例えば、米空軍立川病院でのインターン時代。手術中に米国人の外科医に「Let go」(放して)と言われた日本人のインターン生
が「Let's go」と言われたと勘違い。「出て行け」と言われたと思い、手術室から出て行ってしまったという。
日本人が苦手なLとRの発音や同音異義語なども盛り込んでおり、木村さんは「学生の英語の勉強にも役立つと思う」と話している。(小林稔子)
●「毎日新聞」2017.6.22
勉強の楽しさ伝えたい
米国滞在通算12年 1500語まとめ
福岡市南区でクリニックを開く医師、木村専太郎さん(79)が、よく使われる医学英語から約1500語をまとめた「医者も知りたい 面白医学英語事典」を出版する。木村さんは「医学を目指す学生だけでなく、海外に留学したい人に手を取ってもらい勉強することの楽しさを伝えたい」と話している。25日には、同市中央区のホテルで出版記念祝賀会が開かれる。
木村さんは九州大医学部卒業後、東京都内の米空軍立川病院でのインターンなどを経て、1965年に初渡米。往来を重ねて81年に帰国するまでにアイオワ州の病院や大学で外科研修を受け、同州で開業するなど通算12年間、米国に滞在した。
事典は、84年から2010年にわたり、九州大医学部同窓会の学誌「学士鍋」に106回連載した「医学英語落書ノート」が基になっている。診療の合間に医学英語辞典をひもとき、時には徹夜で原稿を書いた。連載終了後、同窓生や知人から「出版してほしい」「いつ本になるのか」との要望があり、出版を決めたという。
事典は医学英語の発音と語源などだけでなく、米国での経験や臨床医学者としての実績、日本人が苦手なLとRの発音や同音異義語、ギリシャ神話と医学用語のつながりなど多彩な視点を盛り込んだ。木村さんは「校正や加筆などが大変だったが、思い立って良かった」と振り返った。[山崎あずさ]