図書出版

花乱社

 書評『令和田舎日記』

●「毎日新聞」2020.12.24
4作目の随想集 行橋市・郷土研究家光畑さん
 行橋市の郷土研究家、光畑浩治さん(74)が、随想集「令和田舎日記」(花乱社)を出版した。「生きて残せるものは、歩いてきた道の言葉」と語る光畑さんが、2008年から書きついできたコラムを収録した「田舎日記」シリーズ4作目。語り継ぎたい日々の発見を1編1000字にまとめた365話を収めた。
 光畑さんは元市教育部長。序文を寄せた小正路淑泰さんが「行動するエッセイスト」と称讃するほど、執筆意欲は旺盛だ。08年から3日に1編のペースで書き続けてきたコラムは11月末現在、1251編に上るという。
「書くことは、学び直し。暮しの中で『あれっ』と思うことをたどってみると、意外に大切なものが隠れている」と話す光畑さん。その気付きこそが、尽きない意欲の源だ。
 15年には執筆がきっかけとなって得た情報から、国産ワインのルーツは、江戸初期に小倉藩が現在のみやこ町で、ガラミと呼ばれるヤマブドウを原料に造らせたぶどう酒だったという史実を発掘。理事を務める豊前国小笠原協会が400年前の純国産ワインを再現するプロジェクトにつなげるなど、地域の歴史や文化を掘り起こす活動にも取り組んでいる。(松本昌樹)


●「西日本新聞」2020.12.26
田舎の強さ、大切さ実感
 行橋市の郷土研究家、光畑浩治さんが、随筆集「令和田舎日記」(花乱社)を刊行した。行橋で生まれ育ち、今も暮らす光畑さんが、故郷の文化や歴史、自然などを再発見する「田舎日記」シリーズの第4作。新型コロナウイルスの感染状況から「都会のぜい弱さ、田舎の強さ、自然の大切さを実感する」と光畑さん、ならば「郷土のことをもっと知って、楽しもう」と呼びかける。
 市の総務課長や教育部長を経て退職後の2008年、月刊情報誌の連載を機に随筆を書き始め、3日に1編(千字) を自らに課してきた。書きためた随筆は11月末で1251編。うち15〜19年の未発表作365編を収録した。前作の「平成田舎日記」刊行から約1年のハイペースだ。
 歴史に埋もれたヒト、モノ、コトを掘り起こして光をあてなおすのが光畑さんの特長だ。今回も明治期に行橋出身の「唐辛(とうがらし」という小兵力士がいたこと、日本人初の南極大陸上陸を果たした南極探検隊の服隊長格・武田輝太郎は郷土みやこ町の墓地に眠っていること、戦前戦中に政界や実業界でフィクサーとして暗躍した藤田勇という京築出身の男がいたことなどを紹介している。
 「忘れてはいけないことが、 たくさん埋もれている。字で残しておけば、後に誰かが継いでくれるだろうと思って書いている」。3月には花乱社のホームページに「田舎散人のつぶやき」というブログを開設。毎週1編ずつ過去作の随筆をアップし、新たな読者層への発信にも意欲的だ。
 本の題字は書家の棚田看山さん、挿絵は画家の城戸好保さん、序文は小倉東高校長で郷土史研究家の小正路淑泰さんに依頼。各分野で地域の文化を支える豊津高(現育徳館高)の卒業生仲間がスクラムを組んだ。(石黒雅史)


●「朝日新聞」2021.1.21
京築の歴史発掘
 自身が掘り起こした京築築を中心とした歴史や文学、世相など365編を収めた随筆集「令和田舎日記」を、行橋市の郷土研究家、光畑浩治さん(74)が出版した。2008 年から随筆の執筆をはじめ「田舎日記」シリーズとしては4冊目となる。
 光畑さんは元行橋市職員で、教育部長を最後に07年に退職した。翌年、みやこ町の本と喫茶の店「瓢鰻亭・ひまわりこども」 が発行する月刊通信「ひまわりばたけ」にコラムの連載を頼まれ、3日に1編のペースで随筆をつづるようになった。昨年末現在で1260編を超え、今作には15〜19年の未発表作を収録した。
 光畑さんは愛読者らから「行動するエッセイスト」と呼ばれ、豊前国の埋もれた文化遺産を掘り起こすのが持ち味だ。
 今回は、一般社団法人豊前国小笠原協会が、日本ワイン醸造のルーツと言われる細川小倉藩時代の「ガラミワイン」を400年ぶりに再興した奮闘記などを紹介している。
 光畑さんは「新型コロナで、密ではない田舎生活が注目されている。読者が田舎のことについても関心を持つきっかけにもなれば」と話した。(小浦雅和)

●「読売新聞」2021.2.13
京築の暮らし随筆に 幅広いテーマの365編収録
 京築地域の歴史や文化、人物などを題材にエッセーをつづってきた行橋市の光畑浩治さん(74)が、4冊目の随筆集「令和田舎日記」を花乱社(福岡市)から出版した。今回は京築地域の話題に加え、文学や時事問題など幅広いテーマを盛り込んだ計365編を収録。光畑さんは「田舎暮らしの中で自由気ままに書き継いできた。郷土記録の一つとして、関心を寄せてもらえばありがたい」と話す。
 行橋市出身の光畑さんは、同市職員として市の広報紙の編集に携わったことをきっかけに地域に目を向けた文章を書くようになった。退職後の2008年から、知人が月1回発行するミニコミ誌で、「田舎日記」と題した連載を開始。12年に同誌の発行が中断した後も、「人との出合いや、気になったことを調べるのが醍醐味」と3日に1編(1000字)のペースで「田舎日記」を書き続けている。
 14年に出版した初めての随筆集「田舎日記・一文一筆」は、地元の書家、棚田看山さんとの共著で、エッセーの内容に合わせて棚田さんが書を寄せた。16年の2冊目は、地元のアマチュア写真家、木村尚典さんが写真を手掛けた共著「田舎日記/一写一心」。19年の3冊目は「平成田舎日記」として単独で出版した。
 4冊目は昨年12月に刊行。「京築を歩く」「時代に思う」「人間に学ぶ」など七つの項目を設けた。明治時代に「唐辛子(とうがらし)」のしこ名で活躍した行橋市出身の小兵力士や、豊前国の戦国大名・宇都宮氏と小倉百人一首とのかかわり、みやこ町でギャラーを営む夫婦などを紹介している。
08年から書き始めた「田舎日記」のエッセーは約1270編に。現在も3日に1編のペースで書いており、5冊目、6冊目の構想もあるという。光畑さんは「書くことで、いろんなことを学びなおすことができる。これからも書いていきたい」と語る。(高松秀明)