図書出版

花乱社

 書評『田原春次と堺利彦農民労働学校:社会民主主義派の水平運動と農民運動』


「毎日新聞」西部本社京築版 2023年11月23日

 農民運動家・田原春次の軌跡たどる:行橋の郷土史家小正路さんが新著
 長女への聞き取り、新資料を基に

  県人権研究所副理事長で郷土史家の小正路淑泰さん(62)=行橋市=が、同市出身の水平運動・農民運動の指導者、田原春次(1900〜73年)の軌跡をたどった「田原春次と堺利彦農民労働学校」(花乱社)を出版した。
 田原は旧制豊津中(現育徳館高)、同小倉中(現小倉高)などで学んだ後、早稲田大に進学。米国留学や新聞記者などを経て、37年の衆院選に出馬し初当選。旧社会党などで衆院議員を7期務めた。
 新著では、田原の長女・ルイザさんへの長時間の聞き取りや小正路さんが発掘した新資料などを基に、田原と、みやこ町出身の思想家、堺利彦らが担った社会運動の地域的展開と戦後への継承を描いた。
 出版記念講演会が23日午後1時半、香春町町民センター(同町高野)で開かれ、著者の他、社会運動史の研究者らが講演する。【松本昌樹】




「秋水通信 第36号」幸徳秋水を顕彰する会 2023年12月20日

 顕彰会事務局長で(公社)福岡県人権研究所副理事長の小正路淑泰氏が、「田原春次と堺利彦農民労働学校──社会民主主義派の水平運動と農民運動」を福岡市の花乱社から記念出版した。

 平民社の思想 思想的系譜である堺利彦農民労働学校(一九三一年開設)の参画者が、三〇年代に展開した無産運動の諸相、戦後の堺利彦顕彰会(一九五六年結成) への継承を堺利彦記念館旧蔵資料などを駆使して鮮やかに描き出した。

 「平民社一二〇年──堺利彦と現代」、「第三期堺利彦農民労働学校移動講座 ──満州事変期の全農総本部派」、「独立系水平社・自治正義団と堺利彦農民労働学校──対抗的公共圏の形成」、「高松結婚差別裁判糾弾闘争前後の田原春次と松本治一郎──松本治一郎旧蔵資料(仮)の検討を通して」など一五本の論考を収録。(後略)



「大逆事件の真実をあきらかにする会ニュース」第63号 2024年1月24日

 「文献紹介」小正路淑泰『田原春次と堺利彦農民労働学校──社会民主主義派の水平運動と農民運動』

 本書は福岡部落史研究会創立五〇周年記念出版である。田原春次は、福岡県行橋市出身の水平運動・農民運動の指導者で、アメリカ留学の経験もあり、一九二〇年代から活躍した。「反差別の社会運動と移民支援に力を尽くしたその軌跡を辿る。さらに、松本治一郎旧蔵資料、堺利彦関係資料などを駆使し、独立系水平社・自治正義団、堺利彦農民労働学校の系譜が担った社会運動の地域的展開、戦後への警鐘を鮮明に描き出す。」と、表紙にある。多年堺利彦農民労働学校の事績を明らかにする研究を続けてきた小正路氏は、「堺利彦農民労働学校を水平運動史に位置付けることが、本書に一貫するテーマである。」とまえがきに述べている。【大岩川嫩】




「西日本新聞」北九州京築版 2024年2月10日/ふくおか版 2024年2月15日

 行橋出身の部落解放運動指導者 田原春次の軌跡一冊に
 美夜古郷土史学校長 小正路さんが新著

 行橋市の歴史研究会「美夜古郷土史学校」校長で香春町教育委員会指導主事の小正路淑泰さん(62)が、同市出身の部落解放運動の指導者、田原春次(1900〜73)の軌跡をたどった「田原春次と堺利彦農民労働学校」を出版した。 小正路さんは「自身は何度も挫折しながら厳しい現実をはね返し、人々の部落差別と貧困からの解放に全力を傾注した田原の足跡を知ってほしい」と話している。

 被差別部落出身の田原は、旧制豊津中(現育徳館高)などで学び、早稲田大に進学。米国の大学に留学中は、通信員として福岡日日新聞に寄稿した。37年の衆院選に立候補し初当選。水平運動や農民運動を指導し、当落を繰り返しながら旧社会党などで衆院議員を通算7期務め、69年に政界を引退した。

 本は7章で構成。第1章では、田原の長女ルイザさん(故人)への2009、10年の聞き取り、入手した写真や新資料を基に、若き日の田原の自己形成過程を掘り下げた。

 第2章以降は、みやこ町出身の思想家、堺利彦(1871〜1933)が行橋に立ち上げた「堺利彦農民労働学校」との関わり、「解放運動の父」と呼ばれた松本治一郎(1887〜1966)との関係などを通して、田原の反差別運動、弱者に寄り添う姿勢を浮かび上がらせた。

 小正路さんは豊津高(現育徳館高)在学中に郷土史や堺利彦の研究を始め、九州大法学部で近代日本政治史を専門に学んだ。卒業後教員となり、育徳館高や小倉東高の校長を務めた。堺利彦や田原春次に関する書籍出版は今回が2冊目。
                                                 【森竜太郎】