図書出版

花乱社

 書評『神官・書家・漢学者 吉原古城の探究』

●「朝日新聞」京築版 2018.11.2
 書道家吉原 探究の一冊 /80点掲載・全作品に読み下し文

 行橋市西宮市4丁目の木村尚典さん(78) の編著による「神官・書家・漢学者 吉原古城の探究」(花乱社刊)が1日付で自費出版された。みやこ町出身の漢学者で書道家の古城(1865-1932)を作品や家譜、写真などで詳しく紹介している。

 木村さんは「吉原古城を偲ぶ会」の顧問。転勤で1989年に町内の城井郵便局に局長として着任後、郷土が生んだ古城への研究を始めた。調べるほどに、作品のすばらしさ、古城の偉大さを知り、その驚きが木村さんを突き動かしたという。

 掲載した作品は80点。みやこ町を中心に行橋市や築上町、大分県宇佐市周辺の人などから借りたり、写真に収めたりした。14年前にまとめた私家版「『吉原古城』先生を偲ぶ」に載せた作品60点に20点を加え、読み下し文をすべての作品に添え、読みやすくしたのが特徴となっている。

 さらに古城による極細字の作品も紹介。極細字は弘法大師が中国から導入した書文化の一つ。東京の吉原家から借りた作品は3編の祝詞が書かれ、うち1編は10センチほどの1行に108字がつづられ、1字が1ミリほどの小ささ。古城の極細字としては初公開だという。

 古城は大分の私塾咸宜園や慶応義塾で学んだ後教職に就いた。著書「和魂漢才」は大正天皇が目を通したという。一方で権大教正という高い位の神職となり、晩年は郷里に戻って地元神社で宮司を務めた。

 木村さんはみやこ町犀川伊良原の生まれ。実家の座敷のふすまには書が書かれ、その作者が古城だった。木村さんが結婚する際には 母親から一幅の掛け軸が手渡されたという。古城は頼まれると筆を走らせ、多くの書を郷里に残してもいた。

 書道で師範の資格を持つ木村さんは「古城さんは活躍したにもかかわらず、あまり知られておらず、見直してほしい」と出版の狙いを説明。埋もれた古城の新たな作品が現れるきっかけの期待も込めている。

 B5判、168ページ、300部を印刷。表紙は同町犀川の内垣の屋敷跡に2001年に整備された吉原古城公園の写真が飾る。(久恒勇造)