『必携 スタートアップ企業 労務のチェックポイント徹底解説』安藤社会保険労務士法人編
■本体1800円+税/A5判/182ページ /並製本
■ISBN978-4-910038-77-3 C2034
■2023.7刊
■関係書:『スタートアップのための法務・税務・労務パーフェクトガイド』
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バックオフィスはこれだけでOK!
必須の基礎知識から給与計算実務まで社労士が解説!
●2023年の法改正事項(残業代請求の時効期間変更、時間外手当の割増率引上など)に対応。
●スタートアップ企業が,すべきこと,したほうがいいこと,しないほうがいいこと,
してはいけないことを紹介。
●クラウド型給与システムを使用する場合の留意事項を解説。
●労務コンプライアンス調査の指摘事例など具体的な実例をあげ,特に注意すべき事柄はポイント解説。
●「在宅勤務者の会社への交通費は通勤手当?」など相談Q&A。
●《付録》人数規模別・業種別 各種届出・選任基準一覧表
本書「はじめに」より(抜粋)
私共は日々,スタートアップ,ベンチャー企業などの労務相談や社会保険及び労働保険事務手続き代行,給与計算業務を行っています。通常の社会保険労務士事務所と少々相違する点は,お客様の大多数がIPOなどを目指すIT系のスタートアップ企業であるということでしょうか。それもかなり成長速度が速いスタートアップ企業ですので日々,様々な労使問題などが発生します。勢いがある企業は,海外展開なども急速に進めていきます。これらのお客様についていくために私共は,毎日Slackなどのチャットから相談を受けることにより,いろいろな知識を吸収しながら,学びながら,悩みながら,場合によっては外部の専門家の助けを借りながら,これまで20年間事務所を運営してまいりました。
現在は労働法に関するコンプライアンス意識が非常に求められる時代です。多額の残業代未払い,各種ハラスメント,過労死問題などがトップニュースになることも珍しくありません。労務の問題というのは,労働法に抵触していることに気づきにくい点が特徴であると思います。現在主流となっているクラウド給与などで計算していても,給与計算システムの中の数値のちょっとしたセットミスにより残業代の未払い,正確には一部未払いの状態になっているケースも多く見受けられます。
労務管理というのは,特に最初が肝心です。従業員を雇用する際の労働条件(労働時間制度,定額残業制度,休日,休暇など)の詳細な決めが重要なポイントです。そうは言っても最初から完璧に労務管理をできるスタートアップ企業もないかと思いますので,今からでも本書でちょっとしたコツに気づいていただき,今後の労務管理にお役立ていただければ幸いです。
安藤社会保険労務士法人
代表社員/特定社会保険労務士 安 藤 健 一
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■スタートアップ企業の労務ご担当者様に特にお伝えしたいこと:クラウドツールの活用について
現在では,勤怠管理にはじまり給与計算も様々なクラウドツールが出ており,皆さんもこれらをいくつか利用されているかと思います。労務コンプライアンス調査業務では,労働法関係の法律が遵守されているかについて,それぞれのツールのアカウントをいただき,各種設定などを検証していきます。結果は,残念なことにほぼ大多数のスタートアップ企業において,正確に各種設定がされていません。
正確な設定がされていないということは,正確に給与計算業務ができていないということです。従業員の給与について,きちんと計算されて支払えていないということです。スタートアップだからといって許されることではありません。給与というのは,従業員にとっては何より気になる点で,最も大切な労働条件だからです。
例えば,勤怠管理ツールにおいて残業時間が正確に算出されていないと,当然ながら正確な残業代が計算されません。この残業時間については,勤怠管理ツール上では,設定どおりに残業時間数が出てくるのですが,残業といっても法定外残業時間やいわゆる法定内残業時間が別々に計算される場合もあります。これらの数字を給与計算にどうつないでいくのが正しいのかを,事前によく確認する必要があります。
しかしながら,その勤怠のそれぞれの数字の検証をせずにクラウド給与計算ツールになんとなくインポートし,なんとなく給与計算を回している企業が多いように感じます。その結果,多くの未払い残業につながっている企業をこれまで多くみてきました。今では未払い賃金の消滅時効が2年から3年に延長されていますので,未払い残業代があった場合は,遡及して多額の金額を支払わざるを得ないこともあります。
特に会社が急成長している企業は,労使紛争もよく起こります。その場合には,残業代未払い(一部未払い含む)などの主張も併せて行われることが多いです。そこで焦っても遅いのです。
そもそも,勤怠管理や給与計算業務をしたことがない人にとっては,やはり勤怠管理及び給与計算ツールを設定することは非常に難しい作業となります。よって最初の設定は,労務の専門家である社会保険労務士などと一緒にされることを強くお勧めいたします。
今からでも遅くはありません。自社の給与計算まわりが正しく設定されているかについて,1日でも早く確認してみてはいかがでしょうか。
もくじ
はじめに
スタートアップ企業の労務ご担当者様に特にお伝えしたいこと:クラウドツールの活用について
第1章 2023年 注目の法改正事項
残業代請求の時効がいよいよ3年時代へ(将来的には5年へ)
2023年4月以降労働分の時間外手当について 残業時間が60時間超の場合,50%増しへ
第2章 最近よくお問い合わせを受けるご相談10選
Q1 在宅勤務者の会社への交通費は通勤手当?
Q2 定額残業代制度(みなし残業制度)って何?
Q3 社員紹介にあたって紹介料として一時金を支給したい(リファラル採用,社員紹介制度)
Q4 そもそもの社会保険や労働保険の加入について
Q5 インセンティブや歩合給を支給したい
Q6 賞与を年4回以上出したらダメ?
Q7 裁量労働制って何? フレックスタイム制との相違点は?
Q8 深夜労働の賃金の割り増しは必要? 何時から?
Q9 最近のクラウド勤怠・給与システムでお勧めは?
Q10 36協定(サブロク協定)ってよく聞くけど,どんな書類?
第3章 労働契約,業務委託契約,労働者派遣契約,出向契約とは?
労働契約とは
労働契約と業務委託契約の違い
第4章 就業規則,36協定及びその他の労使協定
就業規則の作成
36協定は必ず締結しましょう
見落としがちな労使協定
第5章 労働時間,休日,休暇,安全衛生:スタートアップで意識したいポイント
労働時間とは
労働時間と時間外労働について
休日と休暇
振替休日と代休
第6章 労働時間制度(フレックスタイム制など)のポイント
労働時間制度について
労働時間制度の詳細(フレックスタイム制など)
労働時間の適正把握とは
第7章 外国人雇用,障害者雇用,無期転換,安全衛生などの留意事項
外国人雇用の留意点
障害者雇用について
無期転換ルールとは
安全衛生関係
法定帳簿とは
労働基準監督署の監督対応
第8章 クラウド型給与計算システムを使用する場合の留意事項6選
給与計算業務を行う上で特に重要な事項
第9章 労務コンプライアンス調査業務における指摘事項例
労務コンプライアンス調査(労務デューデリジェンス)について
第10章 バックオフィス実務で特に注意したいポイント(管理監督者,退職勧奨など,休職規定)
管理監督者について
休職制度について
退職勧奨,本採用拒否,雇止め
【付録】人数規模別,業種別 各種届出・選任基準一覧表
執筆者紹介
【編者紹介】安藤社会保険労務士法人
2002年開業当初から,主にIT系・バイオ系スタートアップ,ベンチャー企業のIPO支援業務,上場企業を含む企業のアウトソーシング業務を中心としたサービスを展開。関与実績は2023年現在250社にのぼる。社会保険労務士有資格者7名,実務経験豊富なスタッフ7名の14名体制で,労務コンプライアンス調査から労務改善コンサルティング業務,給与計算および社会保険手続といったアウトソーシング業務,就業規則コンサルティング,労務相談顧問業務に至るまで一貫したサポートが可能。時代の変化にも柔軟性をもって適応しており,IT系企業が導入するSlackでのコミュニケーション対応はもちろん,各種クラウド系システムを熟知し,抵抗なく対応できる点が強みである。IPOにおける労務コンプライアンス上の課題にたびたび挙げられる,例えば「未払賃金を発生させない」といった実務対応は,全従業員で徹底して意識しながらアウトソーシング業務について対応している。
【執筆者紹介】安藤健一(あんどう・けんいち)
特定社会保険労務士
安藤社会保険労務士法人 代表社員/東京都社会保険労務士会会員
中央大学法学部法律学科卒業後,生命保険会社勤務(契約部及びシステム部)を経て,2002年に安藤社会保険労務士事務所を開業。その後2016年に安藤社会保険労務士法人へと法人成りし,代表社員へ就任。
著書に『就業規則作成マニュアル』(共著,大蔵財務協会)など。
【執筆者紹介】柏木 謙(かしわぎ・けん)
社会保険労務士
安藤社会保険労務士法人所属/東京都社会保険労務士会会員
労務コンプライアンス調査,労務相談,就業規則などの作成,各種コンサルティングなどを担当。
【執筆者紹介】三森千紘(みもり・ちひろ)
社会保険労務士
安藤社会保険労務士法人所属/東京都社会保険労務士会会員
労務コンプライアンス調査,労務相談,社会保険・労働保険事務手続き,給与計算業務などを担当。