図書出版

花乱社

『龍秀美詩集TAIWAN(中文版)』

■本体2500円+税/A5判変型/168頁/並製
■ISBN978-4-910038-26-1 C0092
■2021.1刊

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日台詩歌の新たな交流をもたらす、清新な精神世界
台湾人の父と日本人の母との間に生まれた龍秀美によって紡がれた詩は、
21世紀の新たな日台交流の世界をもたらす詩歌の架け橋である。

二つの祖国を持つ詩人・龍秀美の
第50回H氏賞受賞作『詩集TAIWAN』を、新たに台湾師範大学教授・
徐国能氏、詩人・片岡文雄氏ほか序文、訳者・金培懿氏の解説、
および著者の自作解説を付し、日・中完全併訳で刊行。




■目次
〈序〉
 薄靄透明媚─我讀龍秀美《詩集TAIWAN》(徐國能)
 生活在他郷,裸?以現(林秀赫)
 所謂以日語寫詩─關於第五十屆「H氏賞」獲獎詩集 龍秀美《詩集TAIWAN》(片岡文雄)
〈詩作品〉
 *
 指紋/看見/包藏/風景/已離山/蛤蜊
 **
 寓言/蝦─母親的夢魘/鵝鳥─母親的夢魘/櫻花/蓮霧/
 心無?礙/以假亂真/野生動物街坊
 ***
 孝服/紙錢/中山高速公路/洗骨─重逢九年後/
 不孝男/夢之胎/年畫/蒼天所賜/
〈著者後記〉
 作為夢土之日本─以之代跋(龍秀美)
 寄予中文版(龍秀美)
〈跋/解説〉
 跋文─故土難離?異郷歸宿?(金培懿)
 詩人龍秀美與《詩集TAIWAN》介紹及選詩解説(金培懿)

詩集 TAIWAN[日文]
うるわしき薄霞─龍秀美『詩集 TAIWAN』を読んで(徐国能)
他郷での生活、差し出されたすべて(林秀赫)
日本語で詩を書くということ─第50回H氏賞受賞詩集 龍秀美『TAIWAN』をめぐって(片岡文雄)
〈詩作品〉
中国語版刊行に当たって(龍秀美)
跋 文─故郷を離れることはできるか? 異郷に溶け込むことはできるか?(金培懿)
詩人龍秀美と『詩集 TAIWAN』の紹介(金培懿)
自作解説(龍秀美)



■本書「中国語版刊行に当たって」より 龍秀美 
 この詩集の翻訳は、日本語版が出版されてから間もなくして金培懿女史により完成されていました。わたくしのルーツである台湾に関してさまざまのご教示をくださった間ふさ子福岡大学教授のご紹介によるものでした。わたくしは、女史の熱意あふれる優れた翻訳をきちんとした形で刊行したいという思いをずっと持ち続けていましたが、諸般の事情により延び延びになっておりました。
 しかし近年父の老いが深まるにつけ、「台湾のものを台湾に返す」ことを考えるようになりました。この出版が歴史に翻弄された父の生きた証拠となり、私のもう一つの故郷である台湾との絆になることを願って出版を決意しました。
 今回この詩集のために頂いた徐先生の序文はわたくしの詩集を広く東アジアの歴史の中に位置づけて頂き、また林先生は台湾と日本の中間的存在としてのわたくしのアイデンティティーの問題を深く読み取ってくださり、二つの国の問題の鮮やかなコントラストを示してくださいました。(後略)

 **

「跋文─故郷を離れることはできるか? 異郷に溶け込むことはできるか?」より 金培懿
 一九九五年の夏、私は福岡大学の間ふさ子教授に連れられて行った秀巧社のオフィスで、初めて詩人龍秀美さんに会った。これ以前に、間教授の口から龍秀美さんの生い立ちや背景、父親の人生、その学問や専門分野のことを聞いていた。しかし、あの蒸し暑い夏の午後、私が秀巧社に入り目にしたのは、落ち着いて品があり、ゆったりとした佇まいで、やさしい口調の女性であった。私は、先ほどまで感じていた暑さも忘れ、まさか目の前の淑女が「不孝男(プーシャオナン)」のような遺憾と訴求が強烈に交差し、鮮烈なイメージが浮かぶ、生命力にあふれた力強い詩を書き上げるとはと、驚きを禁じ得なかった。
 「文は其の人の如し」と言うが、私個人の経験では、実際に詩人に会った時に、その作品との落差に驚く場合の方が多いようである。とは言うものの、だからこそ、詩とは、詩人の心の奥深くに潜んでいる幽けき心情であり、日常世界とは別次元の宇宙であるということを確認することになるのである。(略)
 四年後の一九九九年、私は留学生活で最も多忙で緊張した時期を迎え、連日博士論文の執筆に取り組んでいた。にもかかわらず、その年の末、『詩集 TAIWAN』を読み、私は進んでこの詩集の翻訳を買ってでた。その理由は、もともと現代詩が好きだからということのほかに、当時異国に留学していた私は『詩 TAIWAN』の作品にとても強く共鳴するものを感じたからである。

 異質の文化の中では、母体となる文化は時に振り払うことのできない悪夢ともなり、異郷にある人の捨てがたい拠り所ともなって、美化するあまり大きく膨張してしまうこともある。文化の差異によって思想の齟齬が生じた時には、最も力強く自分を支えてくれるものでもある。
 龍秀美はその詩で、文化の差異という大きな旗印の下に隠されていたさまざまなためらいや迷いを明らかにして、同じ文化の中にも多くの差異が存在することを教えてくれた。あたかも、傷口を開いてみたら癒やしがたい病の原因が突然理解できたかのように。(後略)


【著者紹介】龍 秀美(りゅう・ひでみ)

一九四八年、父劉秀雅・母美智子の間に日本佐賀県で生まれる。一九七四年、日本に帰化。翌年初めて父の故郷台湾台中県豊原郷を訪問する。その頃から台湾をテーマにした詩を書き始める。二〇〇〇年、第二詩集『TAIWAN』で日本現代詩人会第50回H氏賞受賞。第三詩集『父音』で第19回小野十三郎賞最終候補。他に『詩集 花象譚』(詩学社)、編著『一丸章全詩集』(海鳥社)など。


【訳者紹介】金 培懿 

澎湖県西嶼横礁に生まれる。九州大学博士(文学)。現在、台湾師範大学国文学科特聘教授。専攻は日本漢学、経学、朝鮮儒学など。著書に『江戸古学派における『論語』注釈史の研究』、『近代日本『論語』詮解流変』、『日本儒学之社会実践』、『儒学的日式開展』、『幽冥鬼趣与儒家倫常』、共編に『日本儒学研究書目』上・下、共訳に『論語思想史』などがある。