『帝国日本の植民地を歩く:文化人類学者の旅ノート』崔 吉城著
■本体1600円+税/四六判/192頁/並製
■ISBN978-4-910038-10-0 C0095
■2019.10刊
■書評:山梨日日新聞・新潟日報2019.12、東洋経済日報10.25、10.18
忘れたい過去,受け入れ難い遺産を,どう処理すればいいのか。
憎しみ(反日感情)や英雄(殉国者)はどのように作り出されるのか─。
日韓の狭間に生きてきた文化人類学者が,かつての植民地で見聞きし考えたこと。
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私は、日韓関係にはいつも潜在的危険性が内包されていて、表面的には良好な関係であっても、いつ爆発するか分からない爆弾のようなものであり、また、良好な状態が持続したとしても、それは長くは続かず悪化すると思っている。なぜ、韓国では反日感情が強いのか─。反日感情の根源は日本の植民地にあるのか。反日の原因はどこにあるのだろうか。反日の本質を知るために、反日感情を理解するために、私は植民地を研究することにした。本書では、主に現地を訪ね、直接見聞きしたものを中心に、日本の植民地だけではなく、世界史的な植民地を歩いて調査した事例を挙げてその意味を考察してみたい。(「はじめに」より抜粋)
【目次】
はじめに
T 反日と嫌韓
「日帝」の残滓/植民地からの「解放」/『醜い韓国人』/金日成の抗日運動/日本向けではない「反日」/民族主義と反日感情/伊藤博文と安重根/中国の反日との比較
U 反日暴力
旧朝鮮総督府庁舎をめぐって/日本植民地政府は「風水」を分かっていたのか/“十三人委員会”/旧朝鮮総督府庁舎解体撤去/抑圧政策を受け継ぐ
V シンガポールの植民地遺産
日帝支配がもう一年続いていたら/「連合軍の蛮行」/植民地時代を隠さないシンガポール/植民者ラッフルズの足跡/観光資源としての植民地遺産/「少なくとも今の日本人は、人を殺さない」
W 展示された「戦争」 広島平和記念資料館と南京大虐殺記念館
加害者意識なき日本人/「巨大な洗脳装置」/広島平和記念資料館/負の遺産をどうするか?/南京大虐殺記念館/ラーベの日記
X 植民地残滓の肯定
1 台湾・桃園神社
唯一残る日本の神社/植民地の善悪二元論を超えて
2 パラオ
南国へのロマンチシズムと夢/パラオ国民が長生きできない理由/“後期植民地”現象/パラオの歴史はすべてが植民地史
3 南アフリカ
反日と親日の東アジアから遠く離れて/「アフリカのナポレオン」と呼ばれた男
Y 植民地と被植民地の狭間で
1 アイルランド
隣国間における植民地史/宗主国と植民地の認識の違い/悲劇的な植民地官僚ケースメント/植民地支配における近接性と近似性
2 フィリピン
監獄のような“楽園国家”/“独立運動の父”ホセ・リサール /“楽園の国”再訪/植民地の英雄は悲劇から生まれ……
注/参考文献
おわりに
【著者紹介】崔 吉城 (チェ キルソン)
東亜大学人間科学部教授,東アジア文化研究所所長,広島大学名誉教授
1940年6月17日,韓国京畿道楊州に生まれる
1963年8月,国立ソウル大学校師範大学国語教育学科卒業
1985年3月,筑波大学文学博士
専攻は文化人類学
下関市在住
■主要著書
『韓国のシャーマニズム』(弘文堂,1984)
『韓国の祖先崇拝』(重松真由美訳,御茶の水書房,1992)
『恨の人類学』(真鍋祐子訳,平河出版社,1994)
『韓国民俗への招待』(風響社,1996)
『これでは困る韓国:ニューカマー韓国人との対話』(呉善花との対談,三交社,1997)
『親日と反日の文化人類学』(明石書店,2002)
『哭きの文化人類学:もう一つの韓国文化論』( 舘野皙訳,勉誠出版,2004)
『樺太朝鮮人の悲劇:サハリン朝鮮人の現在』(第一書房,2007)
『植民地の朝鮮と台湾』(第一書房,2007)
『映像が語る植民地朝鮮』(民俗苑〔ソウル〕,2009)
『韓国の米軍慰安婦はなぜ生まれたのか―「中立派」文化人類学者による告発と弁明』(ハート出版,2014)
『朝鮮出身の帳場人が見た慰安婦の真実』(ハート出版,2017)
『ワン・アジアに向けて』(編著,花乱社,2017)
『朝鮮戦争で生まれた米軍慰安婦の真実』(ハート出版,2018)
『植民地朝鮮:映像が語る』(東亜大学東アジア研究所,2018)