図書出版

花乱社

『取り戻そう日本人の自立心:アメリカの戦後支配と日本国憲法』小西晟市著

■本体1700円+税/四六判/232頁/上製
■ISBN978-4-905327-71-4 C0095
■発行2017年4月

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豊かさを求め、アメリカに追従してきた戦後の日本。もはや経済大国の道を歩むのではなく、独立自尊の精神に立ち返り、国民が幸福感を持ちうる文化国家を目指すべきではないだろうか。
歴史を顧み、憲法と日米安全保障条約を一人ひとりが問い直し、対等な日米関係が実現されない限り、日本は真の独立国家とは言えない──。
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著者は、全ての価値観が逆転する戦中戦後の混乱期に教育を受け、社会科の高校教師として35年間、変容するこの国を、地方の教育現場から見つめてきた。憲法問題、家族・教育の変遷に接し、これまでの日本、これからの日本を真摯に問いかける。


【目次】
はじめに
■第1章 敗戦と日本のアメリカ化
近代化とともに刻んだ戦争の歴史/終戦/最大の失策、日米開戦/覇権国家アメリカ/敗戦直後の社会の混乱/アメリカ軍の占領政策/日本のアメリカ化
■第2章 日本国憲法とアメリカへの従属
日本国憲法の制定/日本国憲法の平和主義/日米安全保障体制/国民主権を無視した憲法解釈/国家の危機管理機能の低下/自衛戦力の拡充と憲法九条/日本国憲法の問題点/安全保障の面から考える日本の国家体制
■第3章 日本の外交と政治
核軍縮/国際連合の改革急務/国益を守る政治/裏切られた政権交代/自由民主党政権と課題/日本の外交の歴史/地方自治体の合併の弊害/一票の格差/東日本大震災の問いかけ/自然エネルギーの利用
■第4章 変容する日本人の生き方と家族
瑞穂の国日本 日本人の自然観/失われた宗教心/職人文化の衰退/生存権と雇用/産業構造の変容と揺らぐ家族集団/憲法における家族の理念/基礎的集団としての家族/人は環境の中で育つ/躾は幼児期から
■第5章 戦中・戦後の教育
明治維新後、日本が歩んだ近代国家への道と教育/憲法の教育に関する理念と現実/甘えの構図の中で、子どもの自立が阻害される/戦後再び現れた「日の丸・君が代」/「日の丸・君が代」反対闘争の激化、その後/権利と義務の実践学習を/戦時中の青少年と戦後の青少年
参考文献
おわりに

 

【本書「はじめに」より抜粋】
 わが国は二千有余年の歴史を有し、その中で幾多の時代の大変革を経て今日に至っているけれども、一般大衆が変革の主体になったことはない。近代の曙となった明治維新でさえ、その主体となったのは下級武士であり、下級武士も身分制からすれば支配階級である。
 わが国の社会の変動は、常に支配階級間の変動であった。このような歴史の流れの中で、政治は「お上」がやるもの、一般大衆には関わりのないことである、という観念が形成されていった。それは「長い物には巻かれろ」とか「寄らば大樹の陰」などといわれるような、日本人特有の気質を形成することになり、そのような特性は、民主主義社会になった現代も継続されていると言ってよい。「お上」の決定した方針には従順に従っていくのが世渡りの秘訣である、という考え方である。
 太平洋戦争に降伏すると、戦った宿敵アメリカが「お上」になってしまった。アメリカは宿敵の"鬼畜"から憧れの超大国になり、アメリカナイズが流行していった。
 アメリカによってマインド・コントロールされた日本は、一九五一(昭和二十六)年サンフランシスコ平和条約を結び、独立後も防衛・外交はアメリカの掌の中で動かされ、今日に至っている。不平等条約である「日米地位協定」が改定されることもなく、沖縄は半植民地同様である。沖縄ほど密度は高くないけれども、本土にも米軍基地は存在し続けている(三沢・横田・横須賀・座間・厚木・岩国・佐世保など)。日本は独立国家でありながら、国民はそのことに疑問を抱かない。…
 * * *
 私は、日本の敗戦が色濃くなる一九四三(昭和十八)年に小学校(当時は国民学校)に入学し、敗戦の年は小学校三年生であった。教育制度が旧制から新制に移行する混乱期に教育を受け、一九六二(昭和三十七)年より社会科の高校教諭として三十五年間務めた。戦前と戦後の政治の有り様を比較すると、両極端でコペルニクス的転回が起きたと言っても過言ではない。戦後たどったわが国の様相が一庶民の目にどのように映ったのか、つれづれなるままに記述する。



【著者紹介】小西晟市(こにし・せいいち)

1936年、福岡県朝倉市に生まれる。長崎県、福岡県の県立高等学校教諭として勤務。担当教科は社会公民科(政治・経済、倫理・社会)。1996年、定年退職。退職後は農業に携わる。