図書出版

花乱社

『シーボルト『NIPPON』の書誌学研究』宮崎克則著

■本体5000円+税/B5判変型/168頁/上製
■ISBN978-4-905327-67-7 C0020
■書評:「日本経済新聞」2017.8.8/「出版ニュース」5月中・下上旬号/「西日本新聞」2017.4.30

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日本でおこなった公汎な博物調査をもとに,シーボルトが帰国後約20年間にわたり制作・刊行した『NIPPON』は,1800年代の日本の社会・産業技術・文化・風習・地図などの膨大な情報を収め,「未知の国日本」鮮明に描き出した未完の大著であった。
当時最新の技術をもって製作された図版367枚を収録し,ドイツ語版に続き・フランス・ロシア語版も刊行された。
現在,各国・各地に残る刊本・資料を渉猟し比較精査,その制作・印刷・出版過程を明らかにすることで,シーボルトが出版した当時の『NIPPON』の復元を試み,その壮大な出版事業と構想の全貌に迫る。貴重図版305点掲載。


【 本書「はじめに」より】
 1820年代の江戸時代,長崎にやって来たシーボルトが,日本地図を持ち出そうとして国外追放となったこと,日本妻「おたくさ」(其扇,楠本たき)との間に生まれた「いね」が成長して日本人女性で初めての産科医となったことなどは,よく知られている。また,シーボルトに関係する展示会は各地の博物館・美術館で多く開催されている。
 しかし,帰国したシーボルトが自費出版した『NIPPON』に,当時のどのような日本の姿が描かれているのかは,それほど知られていない。『NIPPON』は,彼以前のケンペルやティツィングらの著書に比べると,質量ともに他を圧倒する。特に『NIPPON』に掲載された367枚もの図版には,日本の風景・風習・人物・産業・技術・文化・地図など多岐にわたる膨大な情報が収められており,これを購入したヨーロッパの人々は,いまだ未知の国であった日本を容易にイメージすることができた。
 『NIPPON』の原文復刻は講談社から出ており,日本語訳も雄松堂から出ている。さらに江戸への旅行記は東洋文庫として刊行されている。これらによって,原文がなくとも,『NIPPON』の内容を知ることができるようになったが,『NIPPON』がどのように刊行されたのかについては,充分に明らかでない。『NIPPON』は本文と図版から成り,1832年から約20年にわたり分冊で出た。ドイツ生まれのシーボルトはドイツ語版『NIPPON』を出し,次いでオランダ語版(第1分冊のみ),フランス語版・ロシア語版も出る。
 本書の課題は,『NIPPON』の第1〜7章はどのような順番で出たのか,本文と図版はどのように組み合わされたのか,図版は何を原画としどのように作成されたのか,彩色の仕方はどうなっているのか,フランス語版とロシア語版の内容はどうなっているのか,シーボルトはいかに関わったのかなどである。これらの課題を解決するため,オランダをはじめドイツ・イギリス・ロシアなどに分散したシーボルトコレクションの調査はもちろん,国内外の機関が所蔵する『NIPPON』を比較検討し,その制作・印刷・出版過程を明らかにする。これによって,『NIPPON』の内容をより正確に理解することができる。(略)
 これらを通して,「未完の大著」,「天下の奇書」と評され『NIPPON』に,シーボルトが込めた「意図」と「構想」を探ろう。

 

【目次】
はじめに
第1章 九大本『NIPPON』の書誌情報
 はじめに/1.シーボルトと『NIPPON』/2.『NIPPON』の紙と透かし(Watermark)
 3.『NIPPON』図版の作成/4.『NIPPON』の「INHALT」/5.『NIPPON』の配本と値段/おわりに
第2章 『NIPPON』の色つき図版
 はじめに/1.シーボルトの死去とクォリッチ版『NIPPON』/2.色つき図版の比較
 3.『日本植物誌』(Flora Japonica)と『日本動物誌』(Fauna Japonica)/おわりに
第3章 『NIPPON』の原画・下絵・図版
 はじめに/1.石の宝殿/2.嬉野温泉/3.与次兵衛瀬/4.愛宕山/5.朝鮮/おわりに
第4章 『NIPPON』のフランス語版 『Voyage au Japon』の復元
 はじめに/1.1837年の予約募集書/2.『Voyage au Japon』図版の特徴
 3.『Voyage au Japon』図版の復元/4.『Voyage au Japon』の本文/おわりに
第5章 『NIPPON』のロシア語版
 はじめに/1.1840年の2つの雑誌/2.1854年刊『日本への旅』の検討
 3.『日本への旅』の図版/4.日本地図の検討/5.1850年代のロシア/おわりに
第6章 『NIPPON』の山々と谷文晁『名山図譜』
 はじめに/1.『NIPPON』図版の山々/2.谷文晁『名山図譜』
 3.『NIPPON』と『名山図譜』の比較/4.富士山の火口図/おわりに
第7章 『NIPPON』の捕鯨図
 はじめに/1.シーボルト以前の捕鯨研究/2.『NIPPON』のなかの捕鯨
 3.『NIPPON』の捕鯨図/おわりに
資 料 
 資料1 九大本『NIPPON』の「INHALT」
 資料2 九大本『NIPPON』図版の透かし・石版画工名など
初出一覧
おわりに


【本文見本】



 

 

 

 

 

 

 


【著者紹介】宮崎克則(みやざき・かつのり)

1959年,佐賀県唐津生まれ。九州大学九州文化史研究所助手・九州大学総合研究博物館助教授を経て,現在,西南学院大学国際文化学部教授。文学博士。福岡市在住。
【主著】『大名権力と走り者の研究』(校倉書房,1995年),『逃げる百姓,追う大名』(中公新書,2002年),『古地図の中の福岡・博多─1800年頃の町並み』(編著,海鳥社,2005年),『ケンペルやシーボルトたちが見た九州,そしてニッポン』(編著,海鳥社,2009年),『九州の一揆・打ちこわし』(海鳥社,2009年),『シーボルト年表─生涯とその業績』(共著,八坂書房,2014年),『シーボルト蒐集和書目録』(共編,八木書店,2015年),『鯨取りの社会史─シーボルトや江戸の学者たちが見た日本捕鯨』(共著,花乱社,2016年)