図書出版

花乱社

『観世音寺の歴史と文化財 府大寺から観音信仰の寺へ』石田琳彰著

■本体1500円+税/四六判/168頁/並製/オールカラー
■ISBN978-4-905327-51-6 C0021
■観世音寺発行
■書評:「西日本新聞」2015.11.22

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古代九州の外交・統治の中心地・太宰府にある観世音寺は、稀有の資史料に恵まれた、九州随一の仏教芸術の殿堂である。創建は7世紀後半、天智天皇の発願により造営。西海道の僧統を管轄し、東大寺・下野薬師寺とともに「天下三戒壇」の1つに数えられる。律令制度の衰退後は、民衆を背景とする観音信仰の寺へとの移りかわり、現在までつづく九州西国三十三カ寺観音霊場・百八観音霊場の札所打止の寺として崇拝を受けている。
太宰府天満宮とともに、古都・太宰府の水脈をつたえる観世音寺の1300年にわたる歴史と、日本最古の国宝の銅鐘、日本第一の丈六の不空羂索観世音菩薩・馬頭観世音菩薩など数多くの重要文化財を、最新の調査をふまえ紹介する。〈図版約80点掲載/オールカラー〉

見本: 本文1 本文2

【目次】
はじめに
T 大宰府と観世音寺
U 観世音寺の創建
V 鎮護国家の寺
W 戒壇院の設置と東大寺
X 観世音寺の経済的基盤
Y 中世観世音寺の隆盛
Z 官寺から観音信仰の寺へ
[ 観世音寺の復興
\ 観世音寺の尊像と文化財


【はじめにより】
 観世音寺はこれまで書籍を一冊刊行していますので、本書は二冊目にあたります。
 第一冊目は、一九三三(昭和八)年に刊行した鏡山猛先生の『筑紫観世音寺誌』でした。同書は現在では入手が困難で、観世音寺の研究書にも引用されることのほとんどない希覯本なのですが、豊かな内容をもつ好著です。
 本寺はこの好著の復刻を考えましたが、刊行後八二年の間に多くの新たな知見があり、手直しを必要とする部分が生じています。しかし研究史上の評価と、鏡山先生の御著書に手を加えるなどという非礼を考えますと、手直ししての刊行はできませんでした。幸い、本寺住職の私は鏡山先生の教え子であり、新たな知見の多い考古学を専攻する研究者でもありますので、先生の構想を踏襲しながら新たに稿を起こすことにいたしました。
 『筑紫観世音寺誌』は「創建の事情」から「近代の観世音寺」にいたる沿革畧記と、講堂・金堂の諸尊像を紹介された「本堂之記」「阿弥陀堂之記」、舞楽面・梵鐘を収められた「其他」からなる寺宝紹介の二部構成になっています。それに倣い、本書も「観世音寺の創建」や「観世音寺の復興」などを収めたT〜[章と、「観世音寺の尊像と文化財」を紹介する\章で構成しました。書名を『新版 筑紫観世音寺誌』にしようかと考えましたが、T〜[章が観世音寺の歴史、\章が観世音寺の文化財を内容にしていることから、『観世音寺の歴史と文化財』としました。
 観世音寺の通史を紹介した書籍はあまりありません。本書が観世音寺を御理解いただく参考になれば、幸いです。
 


【著者紹介】石田琳彰(いしだ・りんしょう)

観世音寺住職(2005年〜現在)。1943(昭和18)年,福岡県生まれ。1974年に九州大学大学院博士課程単位修得満期退学後,福岡県教育委員会文化課,県立九州歴史資料館を経て,1990(平成2)年から西南学院大学教授。文学博士。考古学・博物館学を担当。弥生時代〜古代の社会構成や東アジアの国際交流を研究テーマとし,『弥生時代社会の研究』,『金印国家群の時代』,『交流する弥生人』,『箸の考古学』,『大宰府と観世音寺』などの著書がある。九州国立博物館の開館にあたって文化交流室(常設展示室)の展示基本計画を主導するなど,社会活動も行っている。西南学院大学大学院学務部長,西南学院大学博物館長などを経て,2014(平成26)年に西南学院大学を定年退職し,現在名誉教授。同年5月に一般社団法人日本考古学協会会長に就任(2016年5月まで)。なお,研究者としては高倉洋彰の筆名を使用。