『騎士と坑夫』燒吾朗詩集
■本体2500円+税/B5変型/208 頁/小口折り並製
■ISBN978-4-911429-01-3 C0092
■著書=『日曜日の心中』 『百年経ったら逢いましょう』
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どこまでも物語として回収され得ないモノローグを紡ぐ営為の果てにもの狂おしく立ち上るのは見果てぬ〈死〉への欲動か──
全36篇にSan Gertz Nigel Nina Ricciの絵を配した著者の日本語詩集第3弾
本文より
──「鐘」より
どこにも行き場のない体になってしまったので
この場で不動のまま 独りダンスを始めてみた
私の体を長らく労わり続けてくれた あなたの
姿が 次第に見えなくなっていくのは なぜだ
つけっぱなしのテレビのニュースが 通り魔の
殺人事件の犯人の顔をクローズアップしている
「人生は『善か悪か』ではなく『悪か最悪か』
だ」 姿が消える瞬間 あなたが遺した言葉だ
思いつく限りのステップを踏むうちに 過去を
全て捨てたくなり どこかで読んだことのある
とある民族の通過儀礼を真似てみることにした
今まで付き合った全ての恋人の名を 紙に書き
それを真夜中 群衆の前で炎に投じてしまえば
全ての過去が消え去るどころか 全ての言葉の
意味が変わってしまうのだそうだ 踊りながら
人生唯一の恋人だったあなたの名前を 震える
手で紙に書き いまや私しかいないこの部屋を
(下略)
目次
にらめっこ
詩歌政策
もやい直しの時刻
鹿
塔と卵
人形遊び
十二月八日
墜落
完全試合
覗き穴の向こう側
最後に見たもの
耳
何も想い出せない
珈琲中毒
国宝
退屈な二人
騎士と坑夫
「ああ」
ロシナンテの描き方
プラスチックだらけ
レジスタンス
亡命
育てる
逆光
たまゆらの踏切
名誉毀損
無人駅の記念帳
赤い靴
甲虫
鐘
笑顔の作り方
洗い場の黙示録
ボランティア
衝突
真夜中のヒドラ
些細な神話
【著者紹介】燒吾朗(たかの・ごろう)
1966年,広島市に生まれる。現在,佐賀市に在住。
英語と日本語の両方で詩作を続けており,これまで英語詩集を4冊,日本語詩集を2冊出版している。
Responsibilities of the Obsessed (BlazeVOX,2013年)
Silent Whistle-Blowers (BlazeVOX,2015年)
Non Sequitur Syndrome (BlazeVOX,2018年)
Sunday Double Suicide (BlazeVOX,2022年)
日曜日の心中(花乱社,2019年)
百年経ったら逢いましょう(花乱社,2021年)
妻を亡くし,現在独身。三児の父でもある。
【画家紹介】San Gertz Nigel Nina Ricci
正体不明のアーティスト。魔術・錬金術・占星術などに造詣が深く,古代や中世の芸術文化からの影響を色濃く感じさせる作品群を常に制作し続けている。ただしその活動内容は,今なおインターネット上でしか垣間見ることができず,日本人なのかそうでないのか,男性なのか女性なのか,いま何歳で,どんな人生をどこでこれまで過ごしてきたのか,現時点では全てが謎のままである。一部では,「もしかすると架空の人物なのでは?」,「実はもうすでに故人なのでは?」,「AI搭載の高性能アンドロイドなのでは?」などといった憶測までもが,まことしやかに飛び交っている。近年の代表作としては,ブリコラージュの技法を駆使した「アーティストよ,今すぐ社会へ出ろ」(2021年),「リヤカーで絵を売り歩く芸術屋」(2022年)や,写真と音楽と映像をミックスさせた挑発的シリーズ「今の美術館に真の美なんてありゃしない」(2022年),「今の学校で真の美なんて学べるわけがない」(2023年)などがある。これまでの燒の詩集にも,たびたび作品を提供している。