『ロミオとジュリエット・悲劇の本質:魂を失った者への裁き』坂本佑介著
■本体2000円+税/四六判/304頁/上製
■ISBN978-4-905327-72-1 C0095
■坂本佑介著『シャイロックの沈黙:ヴェニスの商人・飽くなき亡者は誰か』
愛と死と運命を描いた純愛もの? とんでもない。
金とセックスそして殺戮の世界に生きた人間が,この世の最後にたどりついた「大事な仕事」とやらを,シェイクスピアは謎に満ちた夢の言葉で,400年後の我々にプレゼントしてくれたのだ。
─誰も語ることのなかったほんとうの『ロミオとジュリエット』。
『ハムレット』,『ヴェニスの商人』に続くシェイクスピア精読シリーズ第3弾!
【目次】
前口上
第1章 『ロミオとジュリエット』の概要
第2章 “黄金”をめぐる科白
第3章 恋の表現方法
第4章 ロミオの初恋
第5章 乳母の語るジュリエット像
第6章 ピーターと楽士たちの遣り取り
第7章 ロミオの最期
第8章 登場人物各論
第9章 純金の像
第10章 物語の真相
1 『ロミオとジュリエット』の真相
2 沈黙の作家
3 原始性と象徴性
4 謎解き
後口上
余 録─新しい発見
第一:『サミュエル・ピープスの日記』について
第二:パリス伯爵はなぜ死んだのか?
第三:男下着と女下着の問題点
第四:「a brain」の補足説明
結 語
【第3章「恋の表現方法」より】
ロレンス神父の、ロミオのジュリエットに対する恋についての評価を検討しておこう。
神父は、ロミオがロザラインを忘れ去りジュリエットに走ったことに対し、きわめて批判的である。
神父は言う。
「お前様があんなに恋していたロザラインをもう棄ててしまったといわれるのか? 若い人たちの恋というものは、どうやら、真実、心の中ではなくて眼の中に宿るものと見える」(p88)
心で愛するのではなく、眼で愛するのか? とロミオを批判しているように感じる。もし、そうだとすれば、ロレンス神父は、真の愛は眼でするものではなく心でするもの、と思っているのである。(略)
ロミオとジュリエットの愛については、シェイクスピアは外見と肉体的接触をもって語り続けている。二人は相手の外見に魅せられ、直ちに二度の接吻を交わし、さらに結婚へと走り抜けていくのだ。
今風に表現するとすれば、二人の結びつきは銭とセックスに彩られたもの、とシェイクスピアは語っているのだ。無限の富という甘美な空気を吸い続けている男女が、心ではなくセックスへと急ぐ姿をシェイクスピアは描いているのだ。(略)
愛を富をもってしか表現しないロミオやジュリエットを、理想的人間などと評価するのには、私は大いにとまどいを感じる。ロミオもジュリエットも、無限の富の空気を吸い、ひたすら「肉」の快楽を求める人間だと見るべきである。
黄金信仰しか持たない、魂を失った肉体だけの“セックス人間”であるロミオとジュリエットは同時に、自分のことしか考えない、他人への思いやりも全く持たない怪物である。魂を失った自己中心的人間、自己中心的でありすぎて、天が与えたであろう自分や他人の生命の尊ささえ感じることのない二人である。
【著者紹介】坂本 佑介(さかもと・ゆうすけ)
弁護士。九州大学文学部(社会学専攻)卒業。著書=『よみがえる「ハムレット」─正しい殺人/死者の復讐』(海鳥社,2008年),『シャイロックの沈黙─飽くなき亡者は誰か』(花乱社,2017年)