図書出版

花乱社

『図解で分かる 新・臨床中医学入門〈新版〉』

■陳 勇 著
■本体5000円+税/B5判変型/112頁/並製本
■ISBN978-4-905327-86-8 C3047/2018.2刊
■著者の本『舌診論〈改訂増補版〉:新・臨床中医学 舌診篇』

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中華人民共和国出身。本国で中医師免許を取得後,日本で西洋医学を学んだ著者が,日本人向けに中医学の基礎を簡潔・平易に解説,同時に著者自身の新しい考え方を盛り込んだ基本テキスト。
2001年刊行の初版以降,「理論的かつ臨床に役立つ」と大好評の中医学入門書・最新版。

■本書の特色
1)中医学説を,日常生活の場面などで図解しながら解説した。
2)中医学説のあいまいな面を見直し,できるだけ体系的・論理的に説明した。
3)臓腑弁証(診断)と経絡・経穴のつながりを初めて検討・提唱した。
4)これまで中医学ではっきりと分かっていなかったことを検討し,独自の考え方を提唱した。
5)一日の時間帯が病気と関係していることを検討して提起した。


■目次
 はじめに
序 章 人間と自然界
第1章 点
(定義:「点」とは人体の働きの特徴のことである)
 第1節 前面/第2節 後面/第3節 側面/附:穴位(経穴)

第2章 線
(定義:「線」とは,「点」〔働きの特徴〕とその点と直接つながっているものとの関係のことである。すなわち「線」とは,点と,栄養・働きを行う場所・排泄物の流れる道・経絡などとの関係のことである)
 第1節 栄養/第2節 排泄物(腑)/第3節 経絡/附:陰陽/附:臓腑

第3章 面
(定義:「面」とは,体内の三つ以上のものの互いの関係のことである。すなわち「面」とは,人体内の働き・栄養・排泄物などの互いの関係のことである)
 第1節 気(働きと働き)/第2節 血(栄養と働き)/第3節 水(排泄物)と働き・栄養
 第4節 経絡/第5節 体表の反応点/附:五行/附:特別なこと

第4章 方
(定義:「方」とは,環境と人体の中のものとの間接的かつ複雑につながっているものの関係のことである。すなわち「方」とは,動き・食べ物・気候・夢〔情志〕・その他という環境と人体の関係のことである)
 第1節 動き/第2節 食べ物/第3節 気候/第4節 夢(情志)/第5節 その他(病理産物)

第5章 円(時間帯)
(定義:「円」とは,時間帯と「点・線・面・方」の関係のことである)

「新・臨床中医学」診察カルテ
「新・臨床中医学」動き負荷テストのカルテ
 あとがき

 

■「はじめに」より
  今日では,一般的に「医学」と言えば西洋医学を指し,その進展はめざましく,細胞や遺伝子まで深く研究されている。しかし,臨床において患者の病気が治らない場合,伝統医学の方法を使うと,不思議に治ることがある。そういうわけで,最近,伝統医学(中医学,東洋医学など)が見直されている。
 西洋医学にも,伝統医学にも,それぞれ優れたところがあり,お互いに補い合って臨床時に使うと,きっと役に立つだろう。けれども,それぞれの医学の考え方やシステムは異なっていて,西洋医学は科学的で分かりやすく,伝統医学は非科学的で分かりにくい(と思われている)。だから,一般の人や西洋医学の医者が伝統医学の理論を理解するのはたいへん難しい。
 たとえば,西洋医学の場合は,肝硬変の患者に対して,血液,病理組織,エコー,CTなどの検査をして,診断をする。検査結果が同じならば,たとえ患者が100人いても,同じ薬を出して治療をする。一方,伝統医学の場合は,調べる方法自体が西洋医学と異なる。自然界の環境と個々の人間の体質を重視して,たくさんのタイプに分けて診断をする。だから,肝硬変の患者100人がすべて同じタイプになるわけではない。極端に言えば,一人一人に対する治療方法も異なってくる。
 診断についても,西洋医学の場合は,検査結果が正常なのに患者さんが自覚症状を訴えるときには,治療方針が立てられない。伝統医学の場合はそれでも診察・診断ができる。それで考えると,伝統医学は西洋医学より早く治療方針が立てられるのではないか。
 薬についても,西洋医学の薬には副作用がはっきりと書いてあり,それでも患者に用いている。伝統医学の場合は,副作用がないのではなくて,副作用が起こらないよう患者に薬を用いる(伝統医学の薬は,診断を間違うと,副作用を引き起こす)。
 だから,西洋医学の方法で診断した病名を目安として,伝統医学の薬を用いるのは,たいへん危険なことなのである。
 
 この本は,中医学を分かりやすく図解をまじえて解説し,著者の新しい見方も初めて提唱した。初心者にも学びやすく,一定の経験者にも,研究者にも,役に立つよう工夫してまとめた。以下にその考え方・特色をあげる。

1)中医学説を,日常生活の場面などで図解しながら解説した。
2)中医学説のあいまいな面を見直し,できるだけ体系的・論理的に説明した(「臓は虚証,腑は実証だけ」など)。
3)臓腑弁証(診断)と経絡・経穴のつながりを初めて検討・提唱した(これまでは,弁証論治の後に,どの証〔症状〕にはどんな漢方を処方すればいいのかは知られていたが,経絡と経穴のつながりはよく分かっていなかった)。
4)これまで中医学ではっきりと分かっていなかったことを検討し,独自の考え方を提唱した(?血の理論,?血はどの臓と直接関係があるか,?血の診断方法はどうするか,?血を治療するときの経絡と経穴の選択方法,「情志」を夢の代わりに調べ,実証と虚証を引き起こすことがある。五臓六腑・経絡と人体の動きの関係など)。
5)一日の時間帯が病気と関係していることを検討して提起した。

 以上の考え方に従って,数万例の臨床症例を調べ,「新・臨床中医学」の理論に従って,臨床の症状・舌診・脈診と人体の「動き」との間の関係を検討し,有意差のあるものを目安として,本書をまとめた。今後,舌診や,脈診や,弁証(診断)・処方(薬),経路・経穴,食療法,そして各論(五十肩,腰痛,膝痛,花粉症など)で,著者が調べたデータを発表するつもりである。これは研究者にとっても役立つだろうと思う。


【著者紹介】陳 勇  (チン・ユウ/chen yong)

中華人民共和国江西省永新県に生まれる
1981年,江西省医学院吉安分院卒業
    江西省永新県人民医院中医師(1992年より講師)
1993〜95年,九州大学医学部外国人研究員
1995年,福岡大学大学院体育学研究科入学(スポーツ医学
 専攻,1997年卒業)
1997年,福岡大学外国人研究員(スポーツ医学研究室)
1998〜2008年,鍼灸の専門学校講師
2009年〜,福岡天神医療リハビリ専門学校鍼灸科講師
福岡市在住

著書:『経絡テスト』(共著,医歯薬出版,1999)
   『新・臨床中医学入門』(海鳥社,2001)
   『舌診論』(不知火書房,2003)
   『?血論』(不知火書房,2004)
   『新・臨床中医学入門[改訂増補版]』(海鳥社,2006)
   『脈診論』(海鳥社,2010)