『[森里海を結ぶ4]いのちの循環「森里海」の現場から 未来世代へのメッセージ72 』
■田中 克=監修
■認定NPO法人シニア自然大学校地球環境自然学講座=編
■本体2500円+税/A5判/352頁/並製
■ISBN978-4-910038-46-9 C0045
■2022.2刊
■書評:
浦辺登氏書評 2022.11
■関連書:『森里海連環による有明海再生への道』
『いのちのふるさと海と生きる 森里海を結ぶ[1]』
『女性が拓くいのちのふるさと海と生きる未来 森里海を結ぶ[2]』(昭和堂)
『いのち輝く有明海を 森里海を結ぶ[3]』
■もくじ
地球環境のために今、一人ひとりができること
《森里海のつながり─いのちの循環》をテーマに、自然・生き物と向き合う72名の講師による現場からのメッセージは、自然と社会の“再生”に向かう大きな道しるべとなる。各地の現状を知り、自然環境、生物多様性、持続可能社会の源となる“つながり”の大切さを考える入門講座。
■シニア自然大学校地球環境自然学講座(2015〜18年)の書籍化
≪講師名≫
堀野眞一/福島慶太郎/伊勢武史/鎌田雄介/椎葉 勝/岡橋清元/谷 茂則/竹内典之/天野礼子/久山喜久雄/久山慶子/永井雄人/高橋勇雄/松浦秀俊/揖 善継/望岡典隆/細谷和海/山本義和/藤岡康弘/嘉田由紀子/山普@亨/山口美知子/向井 宏/笠井亮秀/鈴木輝明/佐藤正典/富永 修/内藤佳奈子/遠藤 光/松田浩一/中山耕至/上 真一/益田玲爾/田中丈裕/古田晋平/国分秀樹/松田浩一/鷲尾圭司/大幸 甚/蒲田充弘/江崎貴久/養父信夫/井手洋子/小関 哲/山岡耕作/八幡 暁/中貝宗治/池上 惇/新山陽子/田村典江/下村委津子/川合真一郎/遠藤愛子/近藤洋一/瀧澤美奈子/藤崎憲治/橋本みの/小林朋道/湯本貴和/仁科エミ/石崎雄一郎/倉田麻里/野口栄一郎/藤井 巌/畠山重篤/山内明美/小西晴子/和田敏裕/桝田洋子/吉岡崇仁/吉積巳貴/吉永郁生/吉澤保幸(掲載順)
目次
はじめに[認定NPO法人シニア自然大学校代表理事 金戸千鶴子]
プロローグ:いのち巡る「森里海」の世界を未来世代へ[京都大学名誉教授 田中 克]
第1部 森についての知識を広げる
第2部 山を活かし、山に生きる
第3部 森を通した地域活動を知る
第4部 川と淡水魚についての理解を深める
第5部 琵琶湖環境についての理解を深める
第6部 陸と海の境界の役割を理解する
第7部 海の生物への理解を深める
第8部 恵み豊かな海を取り戻す
第9部 海とのふれあい・文化・地域活動を知る
第10部 農を取り巻く環境を知る
第11部 消費者としての環境意識を高める
第12部 水を取りまく国内外事情を知る
第13部 視点を変えて生き物を見る
第14部 世界の自然を知る
第15部 東日本大震災復興について知る
第16部 森里海のつながりから地域創生を考える
聴講者の感想/講演者紹介/編集後記
おわりに[地球環境自然学講座スタッフ幹事 藤原雄平]
「プロローグ:いのち巡る「森里海」の世界を未来世代へ」より
「環境の世紀」と呼ばれた21世紀──くも20年以上が過ぎ去りました。大きな転換のきっかけと期待された新しい世紀への移り変わりも事態の改善にはつながらず、地球温暖化に象徴的に見られるように、地球環境はいっそう深刻さを増し、このままでは近未来世代の幸せは望むべくもありません。20世紀の主役として生きてきた私たちは、いったい、この事態にどのように責任を取り、孫の笑顔を思い浮かべればよいのでしょうか。
この夏も、猛暑の後の冷夏と豪雨、さらに人災といえる新型コロナウイルスの急激な感染拡大と、今を生きる私たちの暮らしはもとより、この先も生き続ける孫世代の未来への不安は募るばかりです。いったい、何がこのような事態を招いたのでしょうか。20世紀後半を経済成長の時代として“走り抜けてきた”私たちの責任は免れないと思われます。
(略)地球は、多くの生き物が環境に適応し、相互に折り合いをつけながら生きていく一つの生命体ともいえる存在です。これまで調和を保ってきた地球生命体に今大きな異変が生じています。あまりにも大きな影響力を持った唯一種の生物種である私たちヒト(ホモ・サピエンス)が地球の“能”を大きく損ない、もはや自己修復できる限界を超えようとしています。それが、今私たちが直面している地球環境問題だといえます。このままでは孫の世代が生まれてきてよかったと生を喜ぶ権利さえも、今を生きる世代の身勝手な振る舞いで奪い去ろうとしているのです。
地球と地域の“免疫機能”を担っているのは森と海とのあいだを循環する、すべてのいのちに不可欠な水です。私たちはあまりにも水に恵まれた環境にあるだけに、その存在の“ありがたさ”に気づかず、悠久の時を経て巡り続けてきた循環を断ち切り、免疫機構を壊しているのです。「森里海」は、今一度全てのいのちを育む、水の循環とその大元である海に思いをはせ、「里」の住人としての私たちの振る舞いを見直し、続く世代からの借りものである自然を整え直して送り届けようとする意思表示なのです。それをあらゆる方向から学んで来たのが本講座の基本テーマ《森里海のつながり─いのちの循環》なのです。(略) [京都大学名誉教授 田中 克]
【監修者紹介】田中 克(たなか・まさる)
京都大学名誉教授。森から海までの多様なつながりとその再生をめざす統合学「森里海連環学」を創設。国民的社会運動「森は海の恋人」との恊働により、“瀕死の海”有明海や“震災の海”三陸沿岸の水際再生に、海と生きる日本の未来を見据える。シーカヤックにより漁村を巡る「海遍路」に関わる。著書に『森里海連環による有明海再生への道』(監修、花乱社・2014)、『いのちのふるさと海と生きる』(編集、花乱社・2017)、『いのち輝く有明海を──分断・対立を超えて恊働の未来選択へ』(編集、花乱社・2019)ほか。
【編者紹介】認定NPO法人シニア自然大学校地球環境自然学講座
NPO法人シニア自然大学校は1994年創設。「人と自然と文化を大切に仲間と行動する」をモットーに、自然環境教育をとおして啓発活動リーダーを育成し、自然保全の調査・研究と実践活動を展開している。小学校自然ふれあい教室(出前教室)などの活動も行い、また、生涯学習の場として古典文化・芸術などの文化講座を提供している。2005年より、地球環境問題への関心を高め、自然の大切さを学び直す講座として、地球環境自然学講座をスタート。2015年度より基本テーマを“森里海のつながり──いのちの循環”に定め、年間20回の講座を現場で活動される多様な講師の皆様の協力のもと実施している。所在地:大阪市中央区谷町3-1-8-8F