図書出版

花乱社

また田舎日記』光畑浩治著

■本体1800円+税/A5判変型/240頁/並製
■ISBN978-4-910038-57-5 C0095
■2022.8刊
■紹介されました:「毎日新聞」2022.9.12、「西日本新聞」9.13
■著者既刊『田舎日記・一文一筆』(2014年)
  『田舎日記/一写一心』(2016年)
  『平成田舎日記』(2019年)
  『令和田舎日記』(2020年)

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【田舎日記シリーズ第6弾!】
 くるしさは このよにいのちの あるしょうこ
    (本文「風狂の十円易者・村上桂山」より)   

田舎には隠れた遺産が眠り,知ることは暮らしに繋がる。
郷土の下枝董村,末松謙澄,竹下しづの女,小宮豊隆,富島健夫をはじめ歴史に埋もれた殉職者,忘れられた歌人や俳人,女乞食など──隠れた大事なヒト,モノ,コトを掘り起こして京都の地から伝えたい。
今を生きる糧になる108話。

 

目次より

序文──ともに「土台」を築く[書家・棚田看山]
第1章 郷土を歩く
第2章 生活に探す
第3章 言葉に遊ぶ
第4章 人物に学ぶ
あとがき

  

本文より「18 隠れた郷土遺産に魅かれる」

 昭和、平成、令和と生きて、今年、後期高齢者と言われる齢になった。過ぎ行く時の速さを思うと、駆け足人生だったのかな、と思う。何はともあれ、定年退職後、郷土の隠れた遺産探しを愉しんでいる。これまでの「郷土史」には顕れてない「遺産」が、各地に意外と隠れ、眠っている。
 そんな知られてない「郷土の宝」を仲間と探す日々が続く。その様子を記す。
 郷土史を少しかじっているのだが、正直、名所や旧跡などに興味は湧かない。しかし隠れたものや知られてない、見えてない、気づかない「宝」を見つけることには魅かれる。この十五年余の探索で見つけたものを挙げると、日本最初のワイン造りが、寛永五年(一六二八)の細川家「永青文庫」によって福岡県みやこ町犀川大村での「ぶだう酒」醸造との記述を確認。それを追っかけて「がらミワイン」の「再興」が図れた。
 また京都の「銀閣寺」に伝わる花の「無雙眞古流」が、みやこ町勝山新町の木村徳右衛門が宗家だったり、行橋市の大橋正八幡宮の広瀬正和宮司の祖父・武田輝太郎が白瀬中尉の南極探検隊ナンバー2として南極に日章旗を立てた五人のうちの一人であったこと。さらに元号「昭和」を創案したみやこ町勝山生まれの吉田増蔵は、太平洋戦争に突入した昭和十六年十二月八日の真珠湾攻撃の際、昭和天皇が世界に向けて宣戦布告した「詔書」も起草。そして上皇「明仁」を勧進したのも吉田とされる。超メジャーな話も隠れたままだった。それに真意は定かではないが、豊前国の戦国大名・第十六代宇都宮鎮房が豊臣秀吉により謀殺された原因の一つに藤原定家の「小倉百人一首」の色紙奉献を拒んだからとも言われる。小倉百人一首は、第五代宇都宮頼綱が藤原定家に依頼して作ったとされる。そして「定家の百人一首の色紙」が各地の「宇都宮家」に伝わっていた。秀吉はその「定家の色紙」を鎮房に所望し、拒否されたことで「豊前宇都宮」は滅亡への道を辿ることになったとの珍説が伝わる。
 この地には、他にもまだまだ知られてない話が、あちこちに隠れてさりげなく転がっている。逸話には、伝えてきた人の温かさも加わる。
 さて、どこでそんな話を見つけるかだが、探す心と見つける心を、まず持つことだろう。心と気持ちがあってこそ前に進める。難しいことではない。いろんなモノを見過ごさないで注意深く観察することが基本。それに自らが楽しめばいい。自分が楽しめないで相手を楽しませることはできない。
 自分で楽しむ"気"は伝播し、"気"が回っていることも認識できる。



【著者紹介】光畑浩治(こうはた・こうじ)

1946(昭和21)年12月5日,福岡県行橋市に生まれる。1965年,福岡県立豊津高等学校卒業。1968年,行橋市役所に入所。総務課長,教育部長などを経て,2007(平成19)年に退職。
著書=『ふるさと私記』(海鳥社,2006年),『平成田舎日記』(花乱社,2019年),『令和田舎日記』(同,2020年),編著=『句碑建立記念 竹下しづの女』(私家版,1980年),共著=『ものがたり京築』(葦書房,1984年),『京築文化考 1〜3』(海鳥社,1987〜93年),『京築を歩く』(同,2005年),『田舎日記・一文一筆』(花乱社,2014年),『田舎日記/一写一心』(同,2016年)『大樟の里/田舎日記』(同,2021年)