『令和田舎日記』光畑浩治著
■本体2000円+税/A5判変型/392頁/並製
■ISBN978-4-910038-25-4 C0095
■2020.12刊
■著者既刊『田舎日記・一文一筆』(2014年)『田舎日記/一写一心』(2016年)
『平成田舎日記』(2019年)
■書評:毎日新聞2020.12.24
、西日本新聞12.26、朝日新聞2021.1.21、読売新聞2021.2.13
めぐりくる季節に、日々の変化の新鮮さを感じる田舎暮らし。
ふるさと京築〈けいちく〉は、掘れば意外にお宝が隠れていたり。
時代が移り変わっても、大事に語り継ぎたいヒト、モノ、コトの数々。
日めくり発見、365話。
目次
豊前国の深層を掘る[小正路淑泰氏]
第1章 京築を歩く
第2章 歴史を探る
第3章 文学を知る
第4章 言葉に遊ぶ
第5章 生活に聞く
第6章 人間に学ぶ
第7章 時代に思う
「豊前国の深層を掘る」(郷土史研究家・小正路淑泰氏)より抜粋
“行動するエッセイスト”として著名な光畑浩治氏は、この約半世紀の間、豊前国の埋もれた文化遺産を次々と掘り起こし、研究者、メディア、実業家、行政等々と連携しながら地域の活性化に繋いできた。例えば、唐辛という一風変わった四股名で活躍した明治の技巧派小兵力士は行橋市の出身であり(第42話)、築上郡築上町をルーツとする日系二世の豊錦は、アメリカ国籍の関取第一号、太平洋戦争で翻弄される数奇な土俵人生だった(第314話)など、本書で初めて知る読者も多いのではないだろうか。
最近では、光畑氏を中心とする一般社団法人豊前国小笠原協会が、日本ワインの醸造ルーツといわれる細川小倉藩時代の“ガラミワイン”を四百年ぶりに再興し、メディアの注目を集めた。
光畑氏のエネルギッシュな行動と執筆を支えているのは、豊前国に対する愛着と「田舎ぐらし」の矜持である。今回改めて『田舎日記』四部作を読み返してみると、そこには、華やかな「都会」の皮相よりも一見何もなさそうに見える「田舎」の深層にこそ意味や価値があるのだ、という強い信念が貫かれていることがよく解る。
「あとがき」より抜粋
この『令和田舎日記』は、田舎日記シリーズの四冊目。これまで『田舎日記・一文一筆』(書家・棚田看山氏と共著、二〇一四年)と『田舎日記/一写一心』(写真家・木村尚典氏と共著、二〇一六年)、そして単独の『平成田舎日記』(二〇一九年)を刊行した。
『平成田舎日記』は「平成」に記した随想で、一日一篇、読んでいただければ、との思いで三六五篇収録の刊行になった。
今回の『令和田舎日記』も三六五篇を収めたものだが、全てを「令和」に書いたものではなく、「平成」に書いたものも収録した。
十年ひと昔という。暮らしの中で「田舎日記」を書き継いでいる。
一日の起床から就寝までの「一日日記」と並行して、三日に一篇の「田舎日記」を書き継げるのは、いかにヒトやモノ、コトを知らなかったかの証だとも思う。
あれもこれも、ああそうだったのかと、まさに学び直し≠フ日々である。
どうでもいいことかもしれない、が、ちょっとした言葉に魅かれ、調べると、どうでもいいにはならない。不思議と引き込まれていく。さりげない暮らしの中で、あれっ、と思う瞬間がよくあり、辿れば、意外に大切なものが隠れたりしている。
こうした想いは、田や畑、川や野、林や森がすぐそばにある「田舎ぐらし」によって培われたものかもしれない。ごく当たり前のことだが、私たちは、めぐりくる季節によって日々の変化の新鮮さを感じてきた。しかし、今、その自然の大事な営みのサイクルを忘れているような気がしてならない。
生きて残せるものがあるとするなら、歩いてきた道の言葉だろう。良寛、ガラシャ夫人の辞世に、その究極を思いめぐらすことができる風土と人々に感謝したい。
裏を見せ表を見せて散る紅葉 良寛
散りぬべき時知りてこそ世の中の 花も花なれ人も人なれ ガラシャ夫人
言葉で生き、ことばで暮らし、言葉を遺せる歩みができることをありがたく思う。
【著者紹介】光畑浩治(こうはた・こうじ)
1946年12月5日,福岡県行橋市に生まれる。1965年,福岡県立豊津高等学校卒業。1968年,行橋市役所に入所。総務課長,教育部長などを経て,2007年に退職。著書=『ふるさと私記』(海鳥社,2006年),『平成田舎日記』(花乱社,2019年),編著=『句碑建立記念 竹下しづの女』(私家版,1980年),共著=『ものがたり京築』(葦書房,1984年),『京築文化考 1〜3』(海鳥社,1987〜93年),『京築を歩く』(海鳥社,2005年),『田舎日記・一文一筆』(花乱社,2014年),『田舎日記/一写一心』(花乱社,2016年)