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春日 |
のどかなる日にこぼれてや浮ぶらむ まさご流るる春の川岸 |
帰雁 |
帰る雁かへりて春もさびしきに 童のひろふ小田のこぼれ羽 |
鶯 |
いや高くなるかと聞けば
鶯の木の下音にも音をかへて鳴く |
梅 |
梅の花咲ける宿さへ閉ざしけり
小笹の里の春の朝北 |
里霞 |
今朝見れば
なびく霞のおのれから掲げて見する高宮のさと |
爪木 |
伐られつることもおぼえず
爪木さへ木の芽はるにはあふここちかな |
春雨 |
春雨のこさめさびしみ
ひさごさへふるに音せぬ夕ぐれの宿 |
尋花 |
咲く花を尋ねてゆけば
いつよりか去年来し道にみちはなりきぬ |
花下 |
誰よりもさくらが下にちかく居て
前へと人を言はぬ今日かな |
春川 |
浅き瀬に転びまろびてながれ来る枝もさくらの花ざかりかな |
晩鐘 |
いつよりか入相の鐘は鳴りつらむ
心づきたる果ての一声 |
風前落花 |
誘ひゆくちから疲れて
散る花をながるる水にゆづる山風 |
花間鳥 |
咲く花にあそぶを見れば
鳥だにも食むことのみは思はざりけり |
橋霞 |
春の野に橋うち渡るわが身をば
霞にそへて人や見るらむ |
鮎 |
流れくる花に浮びて戯えては
また瀬をのぼる春の若鮎 |
雨中蛙 |
山吹の雫枝にも縋りえで
蛙ながるる春雨の空 |