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初秋 |
昨日よりさらにも空の秋めきて
色かはり来し日影月影 |
三日月 |
初秋の梢を渡る風の上に
散るかと見ゆる三日月の影 |
杣月 |
立ち並ぶ杣山松を伐りしより
思ひもかけず出づる月かな |
大路月 |
ただひとり夜更けてゆけば
行く月とわれとのものぞ 広き大路は |
すすき |
うち招くわざのみならで
花薄 否みざまにも振るたもとかな |
萩 |
乱るればつくろひ変へて
萩の花 一夜にもとの錦なりけり |
久留米柘植信厚七草園のうた |
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纏ひあひて 尾花くず花なでしこの花にも咲ける朝顔のはな |
女郎花 |
をみなへし今や盛りになりぬらむ
枝さへ花の色になりきぬ |
蝉 |
並みたてる庭の木ごとになく蝉も
枝がくれする秋のやまかぜ |
きりぎりす |
さしあへぬ衣ながらに秋更けて
つづりとも言はぬきりぎりすかな |
田家人来 |
田面よりわが門さして来る人の
近づかぬ間に誰と知らばや |
そほづ |
よく見れば門田のそほづ
いつもいつもそなたに人のあるここちして |
なるこ |
人なしと見ゆる山田の田廬より
思ひもかけず引く鳴子かな |
市初雁 |
空せまく見ゆる市路は
見るたびに過ぎぬるあとの初雁のこゑ |
山路牛 |
間なく散る木の葉被きて山路より出でくる牛のすごき夕ぐれ |
山路 |
さをしかの遠ざかり行く影さへも
果てはなくなる山の細道 |
閑居松子落 |
目の前にひとつ落ちたる松の実の
さらにも落ちず暮るる今日かな |
山家 |
谷陰のここにかしこに片寄りて
さびしかるべく見ゆる山ざと |
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わが宿をここにもがなと
みやこ人 言ひのみいひて住まぬやまざと |
短日 |
なにをする暇もなしと
年ごとに日の短さを侘るころかな |
九月尽 |
なにごとも限りと聞けば憂かりけり
秋を果てなる我が身ならねど |