|
初冬 |
今朝見れば 雲も木の葉もそなたへと行かぬものなき冬の山風 |
池時雨 |
池の面に見えては消ゆる千々の輪の
みだれ重ねに降るしぐれかな |
時雨 |
夕されば音降り分きて
むらしぐれ しぐるるうちに時雨くるかな |
雨後庭 |
洗ひいでし庭の真砂は降り過ぎししぐれの雨の撒けるなりけり |
落葉何方 |
もみぢ葉はいづち行くらむ
ここにこそ積もりてあれと言ふかたもなく |
風後爪木 |
夜すがらの風のたまもの拾へとか
木陰に落ちし木々の枯枝 |
霜 |
まばらなる庭の落葉のうへにのみ置くかと見えてのこる朝しも |
凩 |
こがらしの音おそろしき夜の間かな
軽がろし身は取りも行くまで |
雪中山家 |
朝なあさな積れる雪を湯にたきて
谷の清水も汲まぬころかな |
寒雨 |
夕されば 童も老も泣くばかり雪より寒き雨の降るらむ |
社頭雪 |
何方もま白くなりて お前なる鏡のうちも積る白雪 |
衾 |
起きいでてわが寝温めの麻衾
惜しくもさます冬のあかつき |
冬山家 |
人と人語らふ窓のうち見えて
谷間ゆかしき冬のやまざと |
早梅 |
醸みおけるわが手づくりもまだしきに
ほころび出づるつぼの梅かな |
年内立春 |
春も来ぬ 年も残りぬ
皆人の待つに惜しむに心あはせて |
船路 |
来しかたに冬の日数は過ぎ果てて
ここより春の船路なりけり |
元日草 |
うれしくも年のはじめの今日の日の
名に負ひ出でて咲くやこの花 |