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夏芦 |
角ぐみし浦の芦原 いつのまに柔らぎなびく夏は来ぬらむ |
五月雨 |
見渡せば野は海原になりはてて川こそなけれ
五月雨のころ |
夏草 |
猫の子の首の鈴金 かすかにも音のみしたる夏草のうち |
桃実 |
居並びてあるだに暑き夏の日に
身に身を寄せてなれる桃の実 |
うきくさ |
樋口開けし水音今朝は聞えきて
垣内の池を去ぬる萍 |
茶摘 |
夏来れば 見まくほしのの少女ども
いかに群れてか木の芽摘めると |
夕立 |
夕立にさして行きかふ市人のかさは日傘になりにけるかな |
なでしこ |
夏草の底なる見れば 分けもあへず取り上げつべきなでしこの花 |
首夏 |
さしてゆく人の日傘のかず見えてみやこ大路に夏は来にけり |
ほととぎす |
いつもいつも宵より鳴くをほととぎす心得がたき夜深さぞかし |
ほたる |
川風に向ふほたるの行きかねてただよふ軒の松の下かげ |
蓮 |
夕暮れの風をすずしと眠る間にはすのひと花ちりつくしけり |
夏川 |
夏くれば水に住みてもあるばかりはだか童の群るるなの川 |